小池都知事と野村弁護士の報道に見るマスメディアの「悪いクセ」野村修也弁護士に対する処分、2年目を迎える小池都政の政策に関する報道から、マスメディアの「悪いクセ」を考える(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 政権や自治体などの政策形成に水面下で関わっていると、新聞やテレビといったマスメディアの報道の偏りに憤ることが多いのですが、最近はその思いを強くする出来事が続いているので、今回は2つの事例を基に、マスメディアの悪い“クセ”を改めて考えてみたいと思います。

野村修也弁護士に関する
一方的なメディアの報道

 1つは、テレビのコメンテーターとして有名な野村修也弁護士に対する、第二東京弁護士会の厳し過ぎる処分に関する報道です。この報道では、事実を一面的にしか報道しないというマスメディアの悪いクセが明確に表れています。

 野村弁護士は、橋下徹氏が市長だった当時に大阪市特別顧問になり、市職員の不祥事を調べる第三者調査チームの責任者となりました。そのチームが市の全職員を対象に、組合活動や選挙運動への関与を尋ねるアンケート調査を行ったのですが、その内容に問題があったとして、第二東京弁護士会は野村弁護士に対して業務停止1ヵ月の懲戒処分を課しました。

 この問題に関する新聞各紙の報道を見ると、どこも同じように、このアンケートが憲法の保障する職員の団結権やプライバシー権などの基本的人権を侵害する内容で、労働組合の活動を萎縮させたと弁護士会が結論づけ、これに対して野村弁護士は日本弁護士会に不服申し立てを行う意向を示した、というトーンで報道しています。

 つまり、どのメディアも基本的に、アンケート調査の内容に問題があったという弁護士会の見解を紹介しつつ、野村弁護士についてはそれに抵抗する姿勢を示したという点のみを報道しているのです。

 しかし、野村弁護士が作成・公表したプレスリリースを見ると、本件に関する民事裁判では、アンケート項目の一部は政治活動の自由への萎縮効果をもたらすと考えられるものの、本件アンケートが市職員の思想良心の自由を侵害したものとは言えないと認定されており、野村弁護士個人に対する責任追及はすべて棄却されているとのことです。