甚大な被害を出した西日本豪雨は死者が200人を超え、行方不明者も数十人に上るとみられる。土砂崩れや浸水による家屋の被害は総務省消防庁の集計によると、3万棟を超えるのは確実。新聞やテレビの報道関係者も続々と現地入りし、被災地の様子をつぶさに伝えているが、こうした災害報道を巡り、インターネットなどで必ず取り沙汰されるのが報道の在り方や内容に対する批判だ。新聞社での記者時代に災害の現場を多く経験してきた筆者が、災害報道と現場取材の実態と意味を検証する。(ジャーナリスト 戸田一法)
平成で最大の被害
7月6日から日本列島に降り始めた雨は梅雨前線が西日本から東日本へ横断するように停滞し、各地に記録的な雨量をもたらした。気象庁は8日にかけて岐阜、兵庫、鳥取、岡山、広島、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎の11府県に大雨特別警報を発令したが、土砂災害や河川の氾濫などで各地に被害が相次いだ。警報解除から1週間が経過した今も帰宅できない避難者が約5000人に上る。
特に被害が大きかったのが、広範囲で冠水した岡山県倉敷市、土砂崩れが発生した広島県広島市や呉市、熊野町、愛媛県宇和島市や西予市、大洲市など。犠牲者や浸水被害はこの3県に集中している。死者・行方不明者の人数は確定していないが、1982年に299人の死者・行方不明者が出た長崎大水害に次ぐのは確実で、平成に入ってからは最悪の水害となった。
一時は25万以上の世帯で断水となり、停電のまま電源が復旧しない地域が残るなどライフラインを直撃。列車の路線や道路が寸断された場所もあった。テレビや新聞報道で目にする通り、土砂崩れや土石流があった地域では家屋に樹木や土砂が流れ込み、家屋そのものが流失した場所も。浸水被害があった場所でも家財などが根こそぎ流されたほか、水に漬かって廃棄せざるを得ないなどの被害も出て、被災地の生活再建に見通しは立っていない。