ヒトの知能は低下しつつある?
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 巨大脳を獲得することで独自の進化を遂げてきた人類。従来の仮説では、進化の歩みはとどまらず、人類の知能指数(IQ)は20世紀の間も着実に上昇したといわれている。

 この現象は世界35カ国の知能検査データを解析し、「人類の知能指数は、上昇し続ける」と結論したニュージーランド・オタゴ大学のJ.フリン教授にちなみ、「フリン効果」と呼ばれている。

 しかし先日、従来の仮説とは全く逆の現象を示す研究結果が、米国科学アカデミーの機関誌「PANS」に報告された。

 ノルウェーの研究チームによると、20世紀後半からノルウェー人男性のIQが徐々に低下しているというのだ。

 同研究は、1970~2009年に徴兵検査で知能テストを受けた73万人のノルウェー人男性のIQスコアを比較したもの。生年は62~91年に相当する。

 解析の結果、62~75年生まれの対象者では、フリン効果が認められたが、75年を境に1世代あたり平均7ポイント、IQスコアが低下していた。つまり「負」のフリン効果が認められたというのだ。

 同研究では、同一家族、血縁内のIQ比較も行っている。その結果、父子、兄弟間でも「負のフリン効果」が認められた。つまり、父より息子の、兄より弟のIQスコアが低下していたのである。

 研究者は「嫌な言い方だが、知能指数の低い人が子沢山なのではない。家族内で負の効果が見られることから、環境要因が関係していると思われる」としている。

 実は、フリン効果が否定されるのはこれが初めてではない。英国やデンマーク、フランス、オランダなど欧州各国からも同様の事実が報告されている。

 それらを総合すると「負」に働く環境要因には、教育制度の変化や読書量の減少に加え、インターネット三昧の生活があるという。便利が高じて情報処理や判断の必要が減り「自ら考えること」を放棄した結果、なのかもしれない。

 さて、夏休みだ。難しい本を一緒に読み、親子で議論するのはどうだろうか。お父さんの認知症予防と子供の知育で一石二鳥である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)