いまや国民皆スマホ時代。電車でも街中でも、皆一様にうつむき、スマホを凝視している光景をよく目にする。その姿は大人だけに限らず、学生はもちろん、子どもやまだ就学前の幼児ですらスマホに触れる機会は少なくない。手軽だからと子どもをあやすために、ユーチューブで動画を見せ続けている親も少なくないのではないか。しかし、スマホが子どもの学力に大きな悪影響を与えているとしたら。あなたはそれでも子どもにスマホを持たせるだろうか。(清談社 藤野ゆり)
スマホ使用と成績低下の
驚くべき関係
「調査によって判明したのは、スマホを長時間使用する中学生ほど、学力が下がっていくという事実です。例えば、家庭で毎日2時間以上勉強してスマホを3~4時間使用する生活を送っている生徒は、家庭学習をほとんどせず、スマホを使用しない生徒よりも、成績が低い。スマホを使用する頻度と学力の低下には、明白な相関関係があるのです」
こう語るのは東北大学教授で、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)の著者である川島隆太氏。川島教授が在住する仙台市では、毎年4月に文部科学省が行っている調査とは別に、仙台の市立中学生2万2390人を対象に学力調査と学習習慣等に関するアンケートを行っている。その調査結果をもとに2011年から独自の解析を開始したという川島教授。データから見えてきたのは、急速に社会に浸透したスマホが子どもの学力に与える大きな影響だった。
「私が特に深刻に捉えたのは、家でほとんど勉強をしない生徒のデータ。家で勉強しないということは学校の授業のみで成績が決まるということです。データを解析すると、13年度の数学の試験では、1日の家庭学習時間が平均30分未満の生徒の平均点は約62点でした。しかし、携帯やスマホを1時間以上使用すると使った時間の長さに応じて成績がどんどん低下していき、4時間以上スマホを使う子は、なんと平均点が15点も下がってしまっていたのです」
15点。受験時であれば、この数字がいかに重要なものか分かるだろう。しかしスマホ使用時間の長さと学力低下が相関関係にあるのならば、当然、こんな仮説が生まれる。「スマホの長時間使用によって睡眠時間が減少したことで、学力が下がったのではないか」。
睡眠と学習の関係については散々述べられていることなので説明するまでもないが、そうなるとスマホ使用が学力に悪影響を与えたというより、スマホの長時間使用による睡眠不足が学力に関係しているということになる。
「スマホを長時間使用する生徒の学力が低いのは、スマホ使用によって睡眠時間が減少することが主因である、という可能性も十分考えられます。しかし、データを詳細に解析すると、たとえ6~8時間の標準的とされる睡眠をとっていても、スマホ使用時間が1時間を超えると学力は低下します。また家庭学習時間が長くても、スマホ使用時間の長い児童・生徒の学力は明らかに低いのです」
つまり、睡眠時間の長さや、家庭学習時間の長さと、学力低下の間には、必ずしも関係があるとは言えないのだ。スマホ長時間使用者の学力が低いのは、睡眠時間の減少が原因とは言えない可能性があるとすれば、一体スマホの何が悪いのだろうか?