ホナミは言う。

「離婚してから10年間はほんとに大変だったよ。ビザの更新のたびに、認められなかったらどうしようってドキドキしてた。おばさんになってデートクラブで働けなくなってからは、お金の心配もあった。それでも日本にいたかったんだよね。日本って長く住めば住むほど離れたくなくなる国だよ。日本人はわからないかもしれないけど、こんな住みやすい国はない。人が優しい。中国ではみんな自分のことしか考えてないよ」

 2002年、ホナミはデートクラブの世界から足を洗った。44歳だった。その後は、不動産会社に形だけ籍を置きつつ、定住ビザを更新しながら日本に滞在し続けた。

「40代のうちは、中国エステでアルバイトすることが多かった。50代になると体力的にそれも辛くなり、居酒屋でアルバイトするようになった。そこで、今のダンナさんと出会ったの」

 相手はある地方自治体で働く公務員だった。年齢はホナミの5歳上、バツイチの独身男性だった。

「気が合ったね。だんだん仲良くなって、外でも会うようになって、私が52歳のときプロポーズされたの」

 それから1年後に結婚。念願だった「永住権」も手に入れ、現在は夫の故郷である埼玉県のある市の郊外に建つ一戸建てに、2人で静かに暮らしている。

「上海に残してきた前の夫や娘とは、いまもたまに上海に帰ったときに会っているよ。そのことはダンナさんも理解してくれている。今はほんとに幸せよ」

 そう振り返るホナミの顔は、年相応に老いて見えた。