米自動車工業会も「この関税は自動車を購入する消費者にとって新たな税金となる」などと反対の立場を明確にしている。

 ただこうした声にもかかわらず、トランプ大統領は今のところ追加関税実施も辞さない強気の構えを崩していない。共和党内で、自由貿易派の勢力が弱まる変化とともに、民主党内でも、従来の支持層に変化が起きているからだ。

 大統領選勝利の原動力となった「ラストベルト」(さびついた工業地帯)の、従来、民主党支持層だった中核労働者らの「トランプ支持」は根強く、全米自動車労組(UAW)も、条件付きで高関税に賛成の立場だ。

同盟国に広がる「米国不信」
EUは中国との連携めざす

 自動車への追加関税問題は、世界の貿易秩序にも大きなインパクトを与える懸念がある。

 USTRの幹部として日米の経済交渉を担当したウェンディー・カトラー氏によると、現在、ワシントンの通商政策関係者の間では「多様性」という言葉がはやっているのだという。

「多様性と言うのはきれいな言い方だが、米国の同盟国たちが米国を『信用できないパートナー』になってしまったと思っているということを、別の表現で言ったにすぎない」

 カトラー氏はニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、中国、カナダ、日本などさまざまな例を引き合いに出しながら、このまま米国が「自国第一」で「暴走」を続ければ各国が米国離れを引き起こすと警告した。

「米国への経済的依存度合いを減らし、米国を外して取引をしようとしている。トランプ政権の通商政策は予期したほどうまく機能しない」と結んでいる。

 ここにきてトランプ大統領はEUを「敵」と呼び、EU側も訪中したトゥスク大統領が「WTO強化のため」として、中国政府とワーキンググループ設置に応じ中国と連携強化を図ろうとしている。カトラー氏の警鐘は一気に現実味を増す。

 米国政治の構造変化に支えられたトランプ大統領の暴走は、国際通商面でも戦後の秩序を大きく揺さぶっている。

(時事通信解説委員 軽部謙介)