音楽教室を徴収対象にした経緯

 まず、JASRACが音楽教室も徴収の対象とすることを発表したのは、2017年2月までさかのぼることができる。この時点ですでに大手音楽教室との意見交換なども始めており、2018年1月からは音楽教室をJASRACの管理対象に含める(使用料の徴収を開始する)ことも表明している。

 JASRACの発表に対して、音楽教室などで組織する団体が東京地裁に、音楽教室には演奏権は及ばない、と提訴した。裁判のため2018年1月の徴収開始は保留となったが、同年3月、裁判の判決前にもかかわらず文化庁から徴収を認める裁定が出された。これを受けてJASRACは、4月からの徴収を開始すると改めて発表。大手楽器メーカーや音楽教室との契約交渉を再開した。

 今年7月の発表は、21事業所、36施設との包括契約を交わしたことの記者発表である。この問題は、1年以上前から方針が決められ、最初の方針発表、団体の告訴、文化庁の裁定、徴収開始の発表、今回の包括契約状況の発表といった経緯をたどっている。

エージェントとしては超優秀なJASRAC

 JASRACは、ネット上ではさながら「パブリックエネミー状態」だが、権利者の立場からすると、じつは、これほど優秀で頼もしいエージェントはいない。JASRACの使命は、著作権管理を信託された依頼主の財産を守り、利益を最大化することだ。一見厳しいように見える使用料の徴収も、職務に忠実だからこそともいえる。

 例えばYouTubeが国内参入間もないころ、いち早く目をつけ、サービス上で利用される楽曲について包括契約を結ばせている。当時、YouTubeはプラットフォームを提供しているだけでメディアではないと、著作権の管理を突っぱねていた。著作権侵害の訴訟も多く抱えており、優秀な弁護士もいたはずにもかかわらずだ。このときもJASRACに対して賛否が起こったが、結果的にはYouTubeで楽曲利用がしやすくなったのも事実だ。