円安はなぜ株価を押し上げるのかPhoto:PIXTA

 春先に105円を割り込んだドルは、その後値を戻し、110円近辺で推移している。100円割れを予想する向きもあっただけに、ホッとしている株式市場関係者も多いであろう。

 円安ドル高は、昔は景気にプラスの要因であったが、先日の拙稿(「円安が景気にいい」という定説が実は正しくない理由」)で示したとおり、最近はそうでもないようだ。にもかかわらず、株式市場では円安が株高要因として語られている。今回は、その理由について考察する。

円安だと上場企業の利益が増える

 日本全体としては、輸出と輸入が概ね同額だから、円安になって輸出企業が持ち帰ったドルを高く売れる儲けと、輸入企業がドルを高く買わされる損は概ね同額だ。輸出の一部は円建てだから、どちらかといえば輸入企業の損の方が大きそうだが、それほど大きな差ではない。

 しかし、輸出企業の利益はそっくり利益となる一方で、輸入企業は輸入コストの増加を一部売値に転嫁するため、輸入企業の利益はそれほど減らない。そこで、企業部門全体としては、利益が増えることになる。

 しかも、輸出企業の多くは上場されている一方で、輸入原材料を使用している企業には上場されていない企業も多い。したがって、上場企業の利益は円安で大幅に増えることが予想される。