価格や商品設定の問題もある。ABIは今後、バドワイザーを米国から直接輸入する計画で、運搬コストなどがかさむ。詳細はまだ明らかにしていないが、プレミアムに位置付けるならば値上げもあり得よう。が、当然それは従来の客層の離反を招きかねない。

 そして今回の契約終了は、キリンにとっても痛手だ。

 全盛期から落ち込んだとはいえ、バドワイザーは現在もビール類市場の約0・5%を占める巨大ブランド。熾烈なシェア争いを繰り広げるビール業界にあって、このコンマ数パーセントでも失うのはつらいところだ。

 キリンは米国で一番搾りをABIに製造委託しており、その協業は今後も続けるとしている。一番搾りを海外で拡販したいキリンにとって、バドワイザーを手放すというのは、ABIとの関係を重視した結果でもある。

沈むビール類市場
巨大外資の攻勢はむしろ追い風か

 国内勢は外資の国内攻勢に警戒心を増す。ABIの戦略で、ナショナルブランドのビールの販売量の落ち込みが激しくなることを恐れているのだ。

 もっとも、ABIが現状の商品構成や営業規模で市場をひっくり返すのは、短期的にはたやすいことではない。

 むしろ、ABIのてこ入れが、単価の高いクラフトビールを含めたプレミアムビールの市場にとって追い風となる可能性も秘める。

 日本のビール類市場が年々縮小する中にあって、プレミアム市場は拡大基調にある有望なカテゴリーだ。大手もクラフトビールに注力し、キリンはバドワイザーが抜けた分をクラフトビールなどでカバーするという。

 世界を握る猛者にかき回される局面を、製品の多様化などで乗り切るか、相手のなすがままになるか。猛暑に浮かれてはいられない。