例えば、予算獲得においては同社内であっても別の部門ははっきりと「敵」になる。成長力や収益力でライバル事業部に負けると、役員への昇進も消える(昨今では事業そのものの成否ではなく、コンプラ問題で足を取られる例も多い)。つまり、部門の利益に貢献した者が、偉くなるのだ。

 また、部門内の利益を守るため、さらには部門内の部課レベルの利益を守るため、社員は会社としては本来意味のない、部門間駆け引きのような不毛な仕事に追われることになる。その調整コストは膨大だ。お客様に提供する価値に直接貢献する業務はせいぜい仕事全体の3~4割くらいではないだろうか。つまり、残りの6割~7割が連邦制維持のための「部分最適と調整」の作業に取られているのだ。中堅中小企業は規模の小ささゆえに、幸か不幸かこういう状況はあてはまりにくいだろう。

【問題点3】
過去の成功者たちが「的外れ」な意思決定をしている

 歴史ある会社ならば、過去の成功者たちが役員の席に座っているだろう。彼らは自分たちの成功法則を理解していると思っている。

 まずは、事業について。例えば、どのように競合他社との差別化戦略を立てるか。いかに生産量を増やし、原料や人件費などのコストを下げて利益率を上げるか。こういった成功を生み出す方法を一つの法則として理解していると思っている。

 もう一つは組織について。人の採用と育成、人材の配置、仕事の任せ方、権限の行使の仕方、内部の規律、インセンティブのつくり方についてなど。これらに対する高い知見を有していると思っている。

 過去の日本では地位が上がると、事業の運営は現場に任せるのが通例で、偉い人はもっぱら人の配置と組織の運営の方に注力してきた。最先端の事業のことは若い人に任せても、組織のことを外さなければ、会社はうまくいくと信じられてきたし、事実そういう側面は大きかった。

 その昔、有名銀行の中興の祖ともいわれた頭取が「トップの仕事は人事のみ」という信念をいろいろなところで語り、その言葉が経済メディアで「あるべき姿」としてよく語られたものであった。

 ところが、これからは製造業やサービス業であっても、データの分析に基づくビジネス、さらにはAIやIoTを駆使したビジネスをやっていかなければならない。いずれにしても、データドリブンであり、事業の作り方や活躍する人が、これまでと根本的に異なってくる。旧世代の経営陣は、デジタルネーティブの思考や行動のリアリティ、およびそれに基づく人や組織の作り方を実感として持ちえない。

 また技術革新や社会変化もグローバルであり、まさに大転換期なのだ。こんな状況下にあっては、組織の運営方法、人の抜擢の方法も過去と同様というわけにはいかなくなっている。 

 しかし、成功者たちは、事業はともかく、「人と組織については十分にわかっている」といまだに思い込んでいる。人間のあり方は不変だからだとでも言いたいのだろうが、この過信というか、見積もりの甘さがピント外れの意思決定を行わせることになり、組織の成長を著しく阻害していくのだ。