試作品を実際に着用して
シャワーに打たれる日々

 試作品ができるたびに、飯田は自宅に持ち帰った。自宅のバスルームで防水性能を試すためだ。服の上から試作品を着て、シャワーを30分以上浴び続けるのが日課になった。

 一方、販促活動も積極的に行った。釣り雑誌やバイク雑誌などメディアへの露出を増やしたり、ブロガー向けの発表会を初めて開催したりした。アウトドアブームも追い風になり、満を持してマイナーチェンジしたイージスは、17年10月の発売を前に、コスパのいい徹底的な防水防寒ウエアとして認知されていった。内心ひやひやしつつ、目標を前年より1万点ほど多い3万点と定め、3万3000点を発注した。

 ところが、発売前の段階で営業から問い合わせが殺到する。「イージスが足りない。在庫を送ってくれ」。なんと、フランチャイズ店からの発注だけで、生産分が全てはけてしまい、発売前に在庫がゼロになってしまったのだ。慌てて3000点を追加発注した。イージス発売以来、初めての増産になった。

 さらに売れ行きを加速させたのが、ユーチューバーたちだ。メディアへの露出が功を奏し、購入した人が「ワークマンのイージスを試してみました」という形でユーチューブにレビュー動画をこぞって投稿したことで、イージスはあっという間に完売。売れ残っていた昨年の在庫まではけて、それでも足りないありさまだった。

 昨年の売り逃しを反省し、今年は生産を強化。一気に昨年の5倍となる15万点を発注し、準備を整えている。というのも、今年9月、東京都立川市の「ららぽーと立川立飛」に一般客向けの新業態「WORKMAN Plus」を出店、今後数年内に全国のショッピングセンターで100店舗の展開を予定しており、主力商品にイージスを据えるからだ。

 言葉を選びながら慎重に話す飯田だが、自ら携わった商品のこだわりについて語るときは実に雄弁だ。飯田の愚直な努力が、イージスを有名アウトドアブランドの牙城を崩す製品に育てることだろう。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)

【開発メモ】防水防寒スーツ イージス
 防寒機能のあるレインウエアは、有名アウトドアブランドなら上下で3万円は下らない。イージスは細かなコストカットにより、6800円(昨年、税込み)で買える。飯田の知らないところで投稿されていたユーチューバーたちのレビュー動画では、「有名メーカーの商品には少し劣るが、この金額ならコスパが良過ぎる」と評価されているようだ。