その意味するところは、同じ粗利でも仕入れ値によって原価率が違うということ。例えば、同じ500円を稼ぐにしても、250円で仕入れたものであれば750円で売ることになるので、原価率は250円÷750円=約33%となる。ところが、1000円で仕入れたものを1500円で売ると、原価率は約67%に跳ね上がる。

 坂本は高い原価率が顧客の幸せに、利益額が「俺の」の幸せにつながり、その二つが折り合う一点を自分で探すように布川に伝えようとしたと考えられる。

 そして、「俺の」で会計の知識を着々と身に付けていたシェフは、布川だけではなかった。他店のシェフたちも会計の重要性を学び、店の経営に生かしていたのだ。

 シェフたちはいつしか、仕入れる食材を他店舗と共同購買できれば、発注量が多くなる分、安く仕入れられるのではないかと、誰に言われるでもなく、仕入れ先と交渉するようになっていった。

 料理人としてそれぞれこだわりの食材があり、そういうものにはノータッチだったが、調理に使うワインを共同化することによって、仕入れ値を下げることができたという成功体験も積んだ。

 現在、布川は9店舗を統括する特任料理長となり、各店舗の料理長にアドバイスする立場となった。しかし、「料理にはよっぽどのことがないかぎり口を出さない」(布川)。坂本が自分にしてくれたように、料理には一切干渉せず、店舗PLを使った店の経営をサポートしたいのだという。(敬称略)