発達障害上司は
「カリスマ」と紙一重

 このケースは、対人面での感情的な交流の困難が指摘される事例だ。コミュニケーションは、対人関係を円滑に進めるための重要な手段である。その中でも、表情を読み取ることは、他者の感情を理解し適切に行動するために大きな役割を果たす。自閉症スぺクトラム障害(ASD)の人は 相手の表情を読み取る力(表情認識能力)が乏しく、表情を介したコミュニケーションが取りにくいといわれている。

 さらに、思いつきで行動や指示を与えられたAさんは非常に苦労したという。

「その上司はこだわりが強くて、一緒に飲みに行く時は、この店ではこれを注文、あの店ではあれを注文と、既に決めておいて部下を連れ回すのです。全てを仕切ってくれるので、楽だといえば楽なのですが、思いつきで行動するので困りました。例えば食事会で健康の話題が出ていたのですが、食事の途中で突然立ち上がり、出るぞと言って急に会計を始めたんです。どうするのかと思ったら、みんなを引き連れて、店の周りを無言で何周も歩くんです。健康のためにウオーキングをするということだったみたいですが、あまりに唐突で…。それでもカリスマ上司なので、みんな従うしかないんです」

 ASDに頻繁に見られる「強いこだわり」の特性を持っている場合、エキセントリックに映るが、これが上司などの場合、「カリスマ」とあがめられるケースも多い。他者の意見に一切耳を貸さず、強い意志を貫き通して事業で成功するといったケースがよく見られるのだ。ASDの傾向がある経営者は、カリスマ性と紙一重だという声も聞かれる。

 部下のみならず、上司にも発達障害者と思しき人がいたAさんに、改めて発達障害者との働き方について聞いてみた。

「一つのミッションをプロジェクト単位で実行するケースが多いわれわれのような業界では、メンバーや部下に発達障害の特性が見られた場合は、なるべく早めに話し合った方がいいと思います。単に『変わったヤツ』として遠巻きに見ていると、絶対にどこかで不適応を起こしますね。また、できて当たり前だという考えだと、トラブルになり、損害が出て、会社に不利益が生じる場合もあります」

「上司だった場合は本当に問題です。人事部に解決を求めても、なかなかうまくことが進まない。逆に仕返しとして冷遇されてしまうケースもあります」
 
 発達障害は軽度の場合、個性と捉えることもできるが、重度の場合、スケジュールに穴をあけたり、チーム内での人間関係がうまくいかず、トラブルになることも多い。常に人間関係がうまくいかなかったり、自分だけ浮いている気がするが、その理由がわからないと思ったら、専門家に診てもらい、アドバイスをもらうのもいいかもしれない。