2018年4月に障害者雇用促進法が改正され、企業の雇用義務の対象に、発達障害を含む精神障害者が加わった。大人の50人に3人程度は発達障害といわれるが、個々の特性に合った職に就けば、彼らも十分にその能力を発揮できるという。そんな発達障害者に向いている職業、向いていない職業や、企業側の対応の仕方を、『となりの少年少女A』(河出書房新社)の著者で、約20年間、発達障害について取材しているジャーナリストの草薙厚子氏に聞いた。(清談社 布施翔悟)
まずは発達障害を
正しく理解しよう
近頃よく耳にするようになった発達障害。だが、一口に発達障害と言っても、大きく3つに分類され、それぞれその特性も異なる。
まず、ASD(自閉症スペクトラム)。かつては「自閉症」「広汎性発達障害」「特定不能型広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などさまざまな名称が用いられていたが、現在ではそれらを総称して、「自閉症スペクトラム」と呼ばれている。
主な特性は、「コミュニケーションの障害」「社会的なやりとりの障害」「こだわり行動」の3つ。一言で言えば「空気が読めない」。相手の表情やしぐさからサインを読み取ることができないため、スムーズに意思の疎通ができず、たとえ話や冗談も通じない。これが、社会生活を送る上で相当な障壁になることは想像に難くない。
次にADHD(注意欠陥・多動性障害)。不注意、落ち着きがない(多動性)、よく考えずに行動する(衝動性)という3つの特性がある。極端に遅刻や忘れ物が多い、デスクが片付けられない、頻繁に貧乏揺すりをする、周囲に指示を仰がずに勝手に行動する、などが特徴だ。
最後にLD(学習障害)。知的能力全般に遅れはないものの、「読む」「聞く」「話す」「書く」「計算する」「推論する」など、学習に関わる能力や機能において、特定の能力の実行が困難な状態のことを指す。
有名人では、俳優のトム・クルーズもLDとして知られている。彼は文字の意味を脳内で認識したり、理解したりするのに時間を要する「失読症」というLDで、映画の台本などは第三者に音読してもらうことでセリフを覚えているのだという。