『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁』
写真:海上自衛隊Instagramより

 著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。本書『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』は日本初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノンフィクションでもある。

 そもそも日本は旧帝国陸海軍の時代から特殊部隊という特殊戦の専門部隊というものを持ったことがない。そんな日本がなぜ特殊部隊を創設する事になったのか。しかも、白兵戦を旨とする陸上自衛隊よりも先に海上自衛隊で。実はその発端となる事件の現場に伊藤祐靖自身がいたのである。

 その事件とは1999年3月23日に発生した能登半島沖不審船事件である。イージス艦「みょうこう」は富山湾において「特定電波を発信した不審船の捜索」を命じられる。湾の中にいる何百隻という漁船の中から、北朝鮮の特定電波を発信した工作船を見つけるのである。不可能なように思われた任務だが「みょうこう」はその日の午後に不審船を発見、追尾する。

 度重なる威嚇射撃の末に北朝鮮の工作船は停船。自衛隊史上初となる「海上警備行動」が発動される。つまり自衛隊員が工作船に乗り込み、立ち入り検査を行うことになったのだ。だが、海上自衛隊は艦同士の沈めあいを趣旨とする訓練しか行ってきていない。高度な軍事訓練を受けている北朝鮮の工作員と銃撃戦を交わすなど、まったく不可能な状況であった。