どの企業も同じ悩みを抱えている

 そんな悪循環を断ち切るべく、「解約を止める」ための部署が立ち上がり、その初代部長になってしまったのが、マーケティングのまったくわからない私でした。
 当時女性の部長はひとりもおらず、もともとは、いわゆる放送畑にいた私にとって、青天の霹靂でした。
 先入観がなかったのが幸いしたのか、私はいろいろな方法を試みて、ついに現場で顧客を引き留める「大事な考え方」に出会いました。

 そして、それを実行することで、4年連続顧客が減っていたWOWOWの顧客数は増加に転じ、その後10余年連続加入件数純増を達成するというV字回復につながっていきました。

 今、多くの企業が同じような悩みを抱えていると感じています。
 自社の顧客から毎月料金をいただいている会社だけでなく、たとえば通販部門がある会社や、WEB上の会員組織を軸にビジネスを展開している会社など、消費者と直接向き合う企業であれば、どこでも「顧客の減少」や「売上の減少」に頭を悩ませていると言っても過言ではありません。

 実際に、私がWOWOWを退社した時に、この「顧客を逃がさない方法」をぜひ教えてほしいと、コンサルティングの依頼をいただき、多くの会社のお手伝いをしてきました。
 現在はその中でも、少子化の逆風の真っただ中の教育関連会社の執行役員として「顧客を減らさないためのマーケティング」の仕事をしています。

 WOWOWのような有料放送でなくても、顧客に継続的に自社の商品やサービスを利用してもらうことで成り立っている企業の構造は、みな同じです。

 大切なのは新規顧客の獲得ばかりに力を入れるのではなく、今いるお客様にいかに継続してもらうか、つまりリテンションマーケティングを行うことです。このリテンションマーケティングを実践することで会社の経営体質が盤石なものに近づき、将来を見通して次の投資への一手が打てるようになると私は考えています。

 今回、多くの会社が悩んでいることの解決手段の一つとなれればと、WOWOWの協力も得てこの本を書くことにいたしました。
 どうしたら、顧客の流出が止められるのか、そして喜んで継続してくれるのか……そのヒントがこの本によって見つかれば、こんなに嬉しいことはありません。

(第2回へ続く)