好況期にこそ経営者がやるべきこととは?好況期にこそ、経営者がやるべきこととは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

松下幸之助さんが唱えた
「ダム経営」の大切さ

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 2012年12月に始まった景気回復局面は今も続き、業績が好調な中小企業が増えています。しかし油断はできません。景気は必ず循環します。好況の後には必ず不況が訪れます。いついかなる時でも企業を維持発展させるために、経営者は好景気のときこそ、「治に居て乱を忘れず」の心構えでいなくてはなりません。

 松下幸之助さんは「ダム経営」を唱えました。「ダム経営」とは、ダムに水をため、必要に応じて徐々に流していくように、ヒト・モノ・カネの経営資源、特に資金に余裕を持ち、好況時にはそれをダムのようにため、不況のときでも安定的な経営をしなさいということです。

 実例を紹介しましょう。私のお客さまに、機械の販売とメンテナンスを手がけている会社があります。10年前、リーマンショックが起こり、景気が急激に悪化しました。すると、その会社の多くの顧客も業績が悪化して設備投資をする余裕がなくなり、新しい機械は売れなくなりました。

 しかし、当時、私のお客さまの会社には資金的な余裕があったため、販売不振などで仕事があまりなくなっていた社員を顧客サービスに回し、顧客が保有する機械が耐久年数を超えていても、1年でも長く稼働するようメンテナンスに力を入れました。時には、無料や格安でメンテナンスを行ったということです。

 しばらくすると景気回復が始まり、顧客にも設備投資の余裕が生まれてきます。新しい機械の導入を決めたとき、どこに声をかけるのかは明白です。

 一方、景気が落ち込んだときに、もし自社に資金的な余裕がなかったら、経営者は自社の立て直しで手いっぱいになり、顧客をサポートする余裕はなかったでしょう。