甲社はここ数年、売り上げが急激に低下、商品は売れず、返品の嵐で在庫の山、山、山。商品や備品がとうとう倉庫に入りきらなくなり、廊下にまで積み上がっていた。危機感を抱き始めた社長は解決方法を探すため、セミナーに参加するようになったのである。

 社長は「この際、徹底的に掃除をして社内環境を整えるのはいいことだ。これをきっかけに会社の業績が持ち直せば、願ったりかなったりではないか」と考え、早速行動に移すことにした。

 次の日、A社長は朝礼の場で、前日受講したセミナーの内容を説明した後、続けて言った。

「来週の月曜日、臨時休業して事務所内の大掃除を行います。社内の大切な行事なので、この日は全員出勤するようにしてください。皆で力を合わせて徹底的に整理整頓と掃除をして、会社の売り上げUPに繋げましょう!」

 急な話に社員たちがざわめき始めると、ある社員が尋ねた。

「今月は閑散期なので、社員が交替で休んでいます。この日に休みが入っている場合はどうなるんですか?」

 A社長は、少々すまなそうにして答えた。

「この日に有給休暇を取る予定の人は、他の日に変更してください」

大掃除に参加できないBは
社長と押し問答に…

 A社長の話を聞いたBは複雑だった。なぜなら月曜日から水曜日まで有給休暇を取って、妻と2泊3日でディズニーリゾートに旅行することになっていたからだ。1ヵ月前に有給を申請し、承認された段階ですぐにツアーを予約、あとは指折り数えて旅行当日を待つばかりになっていた。

 朝礼の終了後、BはA社長に話した。

「社長、月曜日から2泊3日で妻と旅行するため、大掃除は参加できません」

 すると、A社長は困った顔をして言った。

「B君、大変すまないのだが、月曜日は出勤してもらえないか?」
「しかし……」
「これは大切な行事だ。今わが社の売り上げは急激に下がっている。だから社員全員で大掃除をして会社の運気を上げたいんだ。それに君には大掃除の進行役を務めてもらいたい」

 困惑したBは、A社長と押し問答になった。