静岡県富士市にある小さな企業相談所が、いま日本中の中小企業から注目を集めています。「富士市産業支援センター(通称f‐Biz/エフビズ)」の支援を受けた多くの会社が、次々と新たな商品やサービスを開発し、目覚ましい成功を収めているのです。経営不振の町工場から、ほとんど仕事のない個人事業主まで、見事に蘇っていくのです。
その秘密は、f-Bizセンター長・小出宗昭さんの独自の戦略にあります。その戦略とは何か?このたび、ダイヤモンド社から『御社の「売り」を見つけなさい!』を上梓した小出さんが、豊富な実例を示しながら、企業再生のポイントをわかりやすく解説していきます。

プラスチックの容器にしたくても資金がない

 人の性格において、よく長所と短所は表裏一体だと言われます。でしゃばりな人=積極性のある人であったり、大ざっぱな人=大らかな人であったりと、捉え方をポジティブに変えるだけで、その人の魅力には天地の差が生じるのです。

 これは会社にも当てはまります。つまり、「弱み」だと思っていた部分が、捉え方をポジティブに変えることで「強み」だと気付くことができるのです。

 とはいえ、会社を運営していく過程においては、思うようにいかないことがあれば、ネガティブな感情に押し潰されそうになることもあるでしょう。そのようなときに、ポジティブ発想が大切だと言われても、なかなかできることではないかもしれません。

 しかし、弱みや欠点、デメリットといったネガティブ要素の中には必ず「売り」につながる「強み」が潜んでいます。だから、抜け出せないようなネガティブスパイラルに陥っているときこそ、今がチャンスと前向きに捉え、考えに考え抜くべきなのです。

 すると、ブイが水面に浮上するかのごとく、ある瞬間にパッとヒントや答えが見つかるということが起こります。

 現実的に、マイナスをプラスに、「弱み」を「強み」にひっくり返すヒントはいたるところに転がっているものです。

 大正時代から続く老舗食品メーカー「鳥居食品株式会社」さん(浜松市)の例ですが、同社では今どき珍しく瓶入りのソースを生産していました。というのも、プラスチックの容器にしたくても、専用の機械を導入するための資金がなかったからです。

 ガラス瓶は高圧殺菌処理をしてはいるものの、今どきの商品とは違い、どうにも古くさいイメージが払しょくできず、同社ではとても気にかけていました。