「日本銀行は世界の他の中央銀行を上回る金融緩和策を行っている。これを勇敢というよりも無謀だと見なしている人は正しい」
国際決済銀行(BIS)の元チーフエコノミスト、ビル・ホワイト氏は4年近く前の2014年11月、すでにそのように述べていた。
日銀の資産規模が日本の名目国内総生産(GDP)を抜いたと最近報じられた。8月10日時点の日銀資産は548.9兆円。対する名目GDPは17年度(今年3月まで)で548.6兆円、今年4~6月期の年率換算では551.2兆円だ。よって「日銀資産が名目GDPを抜きつつある」という表現が、より正確かとは思われる。
とはいえ、日銀資産が異常な膨張を示していることは間違いない。名目GDPに対する日銀資産の比率は、リーマンショック前の07年で13%、白川方明前総裁時代の終盤で33%だった。その後、13年4月から黒田東彦現総裁の下で、インフレ目標を目指して日銀は、市場から国債や上場投資信託(ETF)などを大量に買い取り始めた。その結果、同比率は100%に達するまでになった。
米国の場合、この4~6月期の名目GDP(年率換算)に対する現在の米連邦準備制度理事会(FRB)資産の比率は21%だ。最も膨張していたジャネット・イエレン前議長時代でも26%程度である。
戦時中と比較するために日本の名目国民総生産(GNP)に対する日銀資産の比率を見てみると、膨大な軍事費を日銀マネーが支えていた終戦間際の1945年3月でも40%台前半だった。一方、現在の同比率は約96%だ。戦争を行っているわけでもないのに、今の日銀資産は異様な姿になっている。