プルデンシャル生命2000人中1位の成績をおさめ「伝説のトップ営業」と呼ばれる川田修氏が、あらゆる仕事に通ずる「リピート」と「紹介」を生む法則を解き明かし、発売たちまち重版が決まった話題の新刊『だから、また行きたくなる。』。
この記事では、本書のキーメッセージであり、選ばれるサービスの条件「レベル11」を実践する、ある歯医者さんのエピソードを特別掲載する。(構成:今野良介)
あなたが歯医者さんを
選ぶ「基準」は何ですか?
「川田さん、患者さんをもっと増やす方法はないでしょうか?」
ある歯医者さんから、そんなご相談を受けたことがあります。
私はそのとき、こういう提案をしました。
「先生は無理かもしれませんが、すべての患者さんをスタッフの方が外までお見送りしたらどうでしょうか。きっとお客さまが増えると思いますよ」
歯医者さんでは、普通、カウンターに座っているスタッフの方が「お大事に」と言って送り出して、それで終わりですよね。これが、私の歯医者さんに対する「レベル10」でした。
(※「レベル10」「レベル11」とは、『だから、また行きたくなる。』のキーメッセージ。お客さまが「普通だな」と感じるサービスが「レベル10」、それをほんの少し超えてお客さまの心を動かすサービスが「レベル11」です。)
だからこそ、「後味」として、外まで出ていってお客さま(患者さん)をていねいにお見送りしたら、それだけでお客さまは感動するのではないか、と思ったのです。
そして、この歯医者さんは、本当にそれを実行しました。
すると、本当に患者さんが急増したのです。
しばらくたってから、先生からこんな話を聞きました。ある日、ひとりの女性スタッフがいつものように患者さんを外まで出て見送っていると、歯医者さんの向かいに住んでいる人が、こう言ったそうです。
「あなたは、いつも本当にていねいに患者さんを見送っているわね。すべてのスタッフの中で、あなたがいちばんていねいよ」
そう言って、とても褒められたそうです。
「ああ、自分がやっていたことって、人からそんなふうに見えることだったんだ……」
そのスタッフの女性は、ものすごく嬉しそうに、先生に話してくれたそうです。
仕事の「自発性」を促すものとは?
お客さまは、サービスを提供する立場の仕事を、とてもよく観ています。
実は、「お客さま以外の人」も、私たちの仕事ぶりを観ているのです。
お客さまから褒められたり、会社の上司や先輩から褒められるのは、もちろん嬉しいものです。でも仕事に直接関係のない、利害関係のない人から褒められるのは、それ以上に嬉しいことだったりしませんか。もしかしたら、近所の人に褒められたことは、この女性スタッフの一生を左右する大きな出来事になるのかもしれません。
自分がやっていることが褒められたら、人はもっと褒められたくなるものです。
「お見送り以外にも、何かできることはないかな?」
そう考えて、仕事への取り組み方が変わるきっかけになるのです。そして「自分がやっていることは、患者さんと自分という関係だけではなく、この街の人たちみんなが見ていることなんだ」と、視野が広がっていくはずです。
誰かに褒められたり、認められたりして、1つのきっかけが見つかると、人はもっとほかにもやってみようと、モチベーションがぐんと上がります。意欲や積極性が生まれてきて、さらに多くの工夫をするようになります。すると「レベル11」が、どんどんできるようになっていくのです。
だからこそ、経営者は社員を、上司は部下を、先輩は後輩を、もっともっと褒めてあげることが必要だと思います。自分がお客さまの立場で「いいね」と思うお店やサービスがあったら、直接相手に伝えるようにします。
直接言うのは照れくさかったり、恥ずかしくても、今はSNSとか褒める手段や人に紹介する手段はいくらでもあります。スタンプだって絵文字だって、気持ちを高めるのにはピッタリかもしれません。
そういう輪を広げて「喜び」や「笑顔」がどんどん増えていけば、もっと楽しくもっと素敵な職場になり、地域になり、社会になっていくと、私は思っています。
(参考記事)
伝説の外資系トップ営業が思わず写真におさめた「感動するサービス」5選
『だから、また行きたくなる。』序章全文公開
https://diamond.jp/articles/-/176396