“好きなこと”は自分のホーム
そこにアウェーをどう組み込むか

 もちろん、可能であれば自身の好きなこと、やりたいことをビジネスにも生かせるに越したことはないが、茂木氏は「好きを追求したい」人こそ、さまざまなことに手を出すべきだと話す。

「“好き”を仕事にして、かつ持続可能にするためには、ただ好きなことだけをがむしゃらにやっていればいいわけではありません。マーケットや社会の需要、潮流に目を向け、社会とすり合わせることが大切なのです。その兼ね合いをうまく見つけられた人が、“好き”を仕事にできるのではないでしょうか」

 実際、茂木氏自身も、そんな社会とのすり合わせによって、好きを仕事にできたタイプだという。

「僕がメディアで頻繁にやっていた“アハ!体験”とは、0.1秒ほどの短い時間に脳の神経細胞が一斉に活動しつなぎ替わる『一発学習』がテーマになっていました。それを画面の一部が変化していく…というわかりやすい手法でクイズ番組にしたことで、幅広い世代の人に私の研究が認知してもらえるようになった」

 単に自分の好きな分野の論文を発表しているだけでは、人々の興味を引くことは難しかったかもしれない。メディアの影響力を感じた茂木氏は、アウェー体験だった「表に出る仕事」を積極的にこなし、ついには番組の司会者にまでなったのだ。

 自分のやりたいこと、好きなこと、というのは、いわば自身のホーム。そのホームのなかでどれだけアウェーにも目を向けられるかが、ビジネス成功の鍵となるようだ。

「好き100パーセントではただのオタクになってしまうけれど、商業に偏りすぎても、自分にとって面白みがなくなってしまう。その両方を持っていることで、ビジネス的に一歩先に行けるのです。ホームとアウェーを行ったり来たりして、自分にとっての最適解を模索することが、好きを仕事にして、かつ成功させる秘訣かもしれません」

 いきなり無策のまま会社を辞めてアウェーに飛び込むなんてことは、さすがにリスキーだ。アウェーに挑戦するためには、自分にとってのホームを確立することがまずは先決。その上でアウェーに果敢に挑戦する、という姿勢が、環境が激変していく現代人の働き方には必要なのではないだろうか。