東京医科大学が医学部医学科の一般入試で女子受験者の得点を一律に減点し、合格者数を制限していたことが判明。大きな反響とともに、女性差別への批判を呼んだ。しかし、問題はそれだけにとどまらない。女性医師対象のウェブマガジンjoy.netを運営する、医師向け人材紹介会社エムステージが、同サイトの会員を中心に緊急アンケートを実施したところ、今回の大学の対応を「理解できる」「ある程度は理解できる」と回答した医師が65%にのぼったからだ。回答からは、いま現場で求められている働き方では、女性医師が出産を経て働き続けることはきわめて困難であるという実態を反映するかのような、諦めの声も多く聞かれる。なぜ優秀な女性医師が差別を受け入れるような回答をするのか、大学病院の働き方の実態についてレポートする。(ライター 奥田由意)
過半数を超える医師が女性差別を
「理解できる」「ある程度理解できる」と答える衝撃
医師向け人材紹介会社エムステージが、8月上旬に女性医師を中心に行った「東京医科大学入試での女子一律原点に関するアンケート調査」。同調査で医学部に入学する女性の数を制限することを18.4%が「理解できる」、46.6%が「ある程度は理解できる」と回答し、「理解できない」「あまり理解できない」という意見を大きく上回る結果になった。
「理解できる」「ある程度は理解できる」とした人の自由回答では、「そういうものだと思っていた」「そのつもりでトップ層に入るよう勉強してきた」「自分も妊娠中や育児中にまわりに負担をかけていたので理解できる」という意見が散見され、女性差別が所与のものとされている現状が明らかになった。
また、「体力的にもきつい当直の穴埋めをするのは非妊娠女医と男性医師」「独身女医としてはママ女医の仕事を全て被っている。女医の数を制限した方が職場は上手く回ると思う」、「女性医師はマイナー科(眼科や皮膚科)に偏りがち」という声もあった。
もちろん、差別を受け入れている当事者がいるくらいなのだからしかたがないのでは、ということでは断じてない。調査を実施したjoy.netの編集長岡部聡子さんは、これまで同サイトの取材で120名、医師担当のキャリアプランナーとして100名、計220名にのぼる女性医師と向き合ってきた。
想像を絶するような努力を重ね、出産し、子どもを育てながら、当直もオペもこなす女性医師もいる。そして、彼女たちを支えてきた男性医師、独身医師や子どものいない女性医師もいる。出産後職場復帰したくても、出産前と同様に働けないことで諦めたり、「マタハラ」に泣き寝入りする医師もいる。また、差別を断固許さないと考える医師ももちろんいる。
岡部さんは、むしろ女性医師たちの側で「自分たちはこうした状況が当たり前だと思ってやってきたけれど、社会の反響を見ると、私たち自身が当たり前だと思うことも問題だったのでは」と、改めてショックを受けている医師が多いと言う。
また、岡部さんは、妊娠中の医師、子どもや要介護者がいる医師が働きにくいような、長時間労働を強いる大学病院での勤務の実態があまり一般に知られていないとも嘆く。せっかく医師になっても、35歳時点で24%の女性医師が離職しているという厚生労働省のデータもある。