夏の甲子園大会で、投手のガッツポーズや希望球団の表明が物議を醸している。もちろん相手選手をおとしめる行為は禁止すべきだが、自由な表現の発露はどうか禁じないでもらいたい。なぜならそれが、モチベーションの向上やパフォーマンスの発揮を間違いなく促進するからだ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

長すぎるパフォーマンスは不要だが…
ガッツポーズ自体は悪くない

生徒の言動を必要以上に縛れば、言いつけがないと動けない人材になってしまいますひとつの事例を問題視して、「以後、一律禁止」としてしまえば、管理は簡単かも知れないが、生徒たちの自由な表現を禁じることになる。これでは、創造性の欠如した人材を世に送り出すことになる Photo:PIXTA

 夏の甲子園大会は、大阪桐蔭の史上初となる2度目の春夏連覇で幕を閉じた。例年以上の熱戦が繰り広げられたが、物議を醸した出来事が2つある。

 ひとつは、大会屈指の剛腕といわれたものの2回戦で惜敗した創志学園の西純矢投手が、「必要以上にガッツポーズをしないように」と球審から注意を受けたことだ。もうひとつは、準優勝した金足農業の吉田輝星投手が、プロ志望で「巨人に入りたい」と発言したと報道されたことに対して、高野連事務局長が「注意しようとは思っています」と言っていることだ。

 これを曲解して、ガッツポーズ禁止、志望球団名は言ってはならないという指導が流布することを、私はおそれる。私には、ガッツポーズをすることも、志望球団を口にすることも、いずれも自由な自己表現であるように思えてならない。審判であろうと、高野連であろうと、必要以上の制約は、どうか与えないでいただきたいと、声を大にして言いたいのだ。

 西投手のガッツポーズに関しては、確かに長かったし、これまでにないほど大きな動きで、試合の進行の妨げになった場面もあったように思う。だから球審は、「必要以上にガッツポーズをしないように」という注意をしているだけだ。ガッツポーズを一律にすべて禁止したわけではない。

 メジャーリーグでも、規則にこそ明記されていないが、ガッツポーズをしないという取り決めがあるという。ただしこれも、自然と発露される表現を禁止しているわけではない。

 いわば、相手選手をおとしめたり、誹謗したりする行動を禁じたり、長い時間にわたってガッツポーズをとることで試合に影響を与えることを回避しようとするものだ。今回の西投手への注意で、ガッツポーズ禁止令など出さぬように、全国各高校の指導者の方々にくれぐれもお願いしたい。