「目をつむって運転」と同じ

 警察庁によると、昨年1年間にスマホなどを含む携帯電話を使用していた自転車事故は明らかになっているだけで全国45件発生。統計を取り始めた2007年の13件から3倍以上に急増した。

 内訳はSNSやポケモンGOなどのゲームによる「画面の注視」が29件で半数以上、次いで通話で4件、着信に対する反応で11件――などだ。筆者も調べたが、最近では東京都豊島区で5月、自転車で電動車いすの50代女性をはね、首の打撲で1ヵ月の重傷を負わせ重過失致傷で10代の男性を書類送検したケースなど、自転車のスマホ運転による事故は珍しくもないことが分かった。

 一方、自転車だけではないが、東京消防庁ではスマホが関わる事故による救急搬送件数が急増している。「自転車」「歩きながら」で取った統計では年々、上昇傾向にある。自転車と同じぐらいに危険なのは鉄道駅で、階段やホームに突き落とされたり、足を踏み外して転落するケースだという。いずれも命の危険に直結しかねない事態だ。

 元警視庁捜査2課刑事で現役時代は主に贈収賄を手掛け、引退後は交通安全協会などで若手巡査を指導する元警部補に以前、話を聞いたことがあった。映画やドラマ「踊る大捜査線」で故・いかりや長介さんが演じた和久平八郎みたいな立場と言えば分かりやすいだろうか。

 実際に、ながらスマホで自転車運転をやってみたらしい。「怖いぞ。目をつむってんのと同じよ」。視野は「気配」以外、分からなかったそうだ。結果、警察の施設内で人生初の“重大事故”を起こしていた。右肩に青あざと擦り傷が残っていた。

 「前科1犯、元大学生」の無職女性は公判で、大学で保育士の資格を取り、社会の役に立ちたかったと夢を語っていた。「そんな悪いことだと思わなかった」という軽はずみな行為は人命を奪い、自身の将来を絶望的なものにしてしまった。

 そして「勉強は続けたかったが、人の命を奪って人の命を預かるような仕事はできない」と声を震わせた。

 この元女子大生の後悔と慟哭が、無自覚で無防備な方々に伝わるよう、そして教訓になるよう、心の底から切に願う。