『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日合併特大号の第一特集は「2018年版 決算書100本ノック!」。特集の発売に合わせた特設サイトでは過去の財務特集の人気記事や漫画などを無料で公開。今回は18年4月21日号から「ソニー/株主資本調達が“高コスト”、企業価値向上ではまだ途上」を紹介。17年度は悲願の“営業利益5000億円超え”を果たし、7200億円の最高益更新を見込むソニー。だが資本コストという要素から考えると、違う姿が見えてくる。(掲載される数字や情報は全て雑誌発売時点のもの)
業績を語る材料として最も頻繁に引き合いに出される営業利益。だが事業を通じて企業価値が上がったかどうかは、「事業を行う過程で支払ったコストに見合う利益を上げたか」を見る必要がある。
そこで、これまでソニーの歴史上、営業利益がピークを迎えた1997年度、2007年度、そして最近の16年度の3決算期を対象に、そのコストを引き“正味で企業価値が上がったか”を見よう。
まず、調達資金で上げた利益を出そう。指標は投下資本利益率(Return on Invested Capital:ROIC)を使う。税引き後の営業利益を、自己資本(株主から集めたカネ)と有利子負債(金融機関などから集めたカネ)の合計で割る。投じたカネへの投資対効果が営業利益より明確に出る数値だ。
さらに、これらの資金を集めるのに要した“コスト”を求める。有利子負債の利子は分かりやすいが、資金の返済義務がない自己資本にもコストが掛かることに注意しよう。株主が持ち株の値上がりや配当アップなど、投資に対して期待する“分け前”を企業側のコストと見なして、株主資本コストと呼ぶ。
算出方法は無リスク投資、つまり国債利回り(リスクフリーレート)、その企業のリスクを示すβ値(1で市場と同じリスク、高ければ高いほどハイリスク)、そのときの株式市場全体の超過期待収益率(マーケットリスクプレミアム)の各数値から計算するが、詳細は割愛する。