“すごい”と”やばい”の両面から、日本史の偉人たちに迫る『東大教授がおしえる やばい日本史』が話題になっている。発売後、即5万部の重版がかかり、Amazonの日本史和書ランキングでも1位に躍り出た。
児童書として作られた本書だが、ビジネス街の書店で大人にも買われているという。本書の監修を担当した、東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんは「“すごい”と“やばい”の両面を知らなければ、歴史を知ったことにはなりません。そして歴史にはいろいろな側面があるのです」と語る。
(聞き手:滝乃みわこ)

「理想の上司」に織田信長を選ぶのは
歴史を知らない人

雑誌やWEBの「上司にしたい歴史上の偉人ランキング」では、しばしば上位にランクインする織田信長。戦における鉄砲の大量導入、楽市楽座で経済活性化、幕府を滅ぼし天下統一のスローガンを掲げるなど、既存の社会モデルに数々のイノベーションを起こした戦国武将だ。

「信長は、世間の人があたりまえだと思っていたことをひっくりかえすアイデアを持っていた人。中国の歴史に通じていた信長は、天皇を超えた存在の“皇帝”になろうとしていたとも考えられます。そういう意味ではベンチャー志向の人が憧れるのは理解できます。

 しかし、信長は自分の利益のためなら、あまりにも手段を選ばない人でした。信長の残忍なエピソードは数ありますが、中でも壮絶なのが、比叡山延暦寺の焼き討ち。

 38歳のとき、信長は仏教の総本山である延暦寺が自分に逆らったという理由で徹底的に攻撃し、僧侶だけでなく避難民の女性や子どもも含め4千人を虐殺しました。延暦寺は単なるお寺ではなく、当時の知の総本山でもありました。4千人といったら、東京大学の教職員の数とほぼ同じ(編集部注:事務系職員、医療系職員などを含まない場合)なので、東大を火の海にしたようなものです