日本史のおもしろさは、ずばり「人」にあります。
何か「すごい」ことを成しとげた人は、歴史に名前が残ります。でも「すごい」だけの人なんて、この世にひとりもいません。むしろ、ものすごい失敗をしたり、へんな行動をしたりして、まわりから「やばい」と思われているような人が、誰にもできない偉業をやってのけていることもあります。 だって、人生は長いのです。いい日も悪い日もあるし、年とともに変化だってあります。 いろんなことを考え、行動し、ときに失敗し、そこから学び、たまに成功する。カッコいい一面もあれば、ダサい弱点もある。
だからこそ、人はおもしろいのです!
「すごい」と「やばい」の二面から、日本史の人物の魅力に迫る『東大教授がおしえる やばい日本史』より、今回特別に内容を一部公開してお届けします。
「西郷どん」の、どこが「すごい」か説明できますか?
大河ドラマ『西郷どん』や上野恩賜公園の「西郷隆盛像」で、多くの人に親しまれている西郷隆盛。でも、いざ「何をしたすごい人?」と聞かれても、じつは上手に説明できない人もいるのではないでしょうか。
すごい西郷隆盛 血を流さずに江戸城の明けわたしに成功
薩摩(鹿児島)のまずしい武士出身だった西郷隆盛は、若い武士や農民たちに大人気でした。それは、はっきりと意見を言う男気あふれる人だったから。
藩主の父の島津久光にもバンバンものを言ったせいで、島流しにされます。しかし、若い武士たちの命がけの署名運動によって何とか呼びもどされました。
薩摩武士の代表となり、薩長同盟を結んだ隆盛は、一気に江戸城を攻めて将軍を殺し、幕府を倒そうとします。そこへ幕府の代表・勝海舟が「江戸城を明けわたすから、将軍と部下たちの命は助けてやってくれ」と頼みにきました。
主君を思う海舟の心に感動した隆盛は、無血開城を決断します。無血開城とは、文字どおり血を流す(殺す)ことなく城を明けわたすこと。隆盛によって、平和的に明治維新のきっかけが作られたのです。