『人事こそ最強の経営戦略』
南和気さんの新刊『人事こそ最強の経営戦略』

 キャリアや働く価値観も、個人によって異なってくる時代です。そういう意味では、顧客の就業時間に合わせる必要があったり、社内で顔を合わせることで仕事が効率化できたりする時間以外は、時間の使い方を個人の裁量で決められるようにしたほうが、一人ひとりの生産性はより向上します。

 そして、仕事を終えた社員が、自分の能力を伸ばすことに時間を使うためのサポートを企業が行っていくことも重要です。このとき、「社員が学ぶ時間が、就業時間なのか、そうではないか」という議論に時間を割くことよりも、「就業時間を短くして、社員が自ら学ぶことを支援する」ほうが合理的です。

 スタートトゥデイもこの支援を積極的に行っています。「自学手当」と呼ばれる自己成長のために支給される手当は、毎月2500円から、最大2万5000円となります。社員の能力の伸ばし方はさまざまです。

 ZOZOTOWNは、支払いを最大2ヵ月後まで延長できる「ツケ払い」や、着るだけで体形サイズを計測できる「ZOZOSUIT」など、斬新なアイデアと、挑戦によって成長してきました。

 こういった発想が将来的に社員から生まれ続けるようにするためには、人事ですべて研修をカリキュラム化し、同期全員が同じタイミングで受けるというスタイルだけではなく、個人が学びたいことを学びたいときに学ばせて、企業はそのためのサポートを行うというスタイルを積極的に採り入れるべきです。これは、中堅企業に限らず、大企業においても同じことがいえるでしょう。

 スタートトゥデイのさまざまな人事の取り組みは、一見個性的にも見えますが、実は事業の個性に合わせて合理性のある人事戦略を着実に行い、試行錯誤の結果、現在の姿になったと考えられます。

 今後事業が成長し、規模が拡大することで、組合や法制度といった枠組みの制約や、トップが担う役割の変化など、新たな課題への対応が必要になるかもしれませんが、「どんな局面でも、人事戦略が事業を支えるために最も優先されるべき」だと教えてくれている企業であるのは間違いありません。