台風の足が速かったせいか、午後6時過ぎに風はまだ残っていたが、夕焼けが見え始めた。外に出てみると、街はさっきまでと一変していた。向かいのマンション1階のエントランスはガラスが粉々になって散乱。街路樹は倒れて根がむき出しで、車道に転がっていた。乗用車は横倒しになり、地面にはひっかき傷が。信号機は点滅した状態で垂れ下がり、警察官が通行車両を誘導していた。

 台風21号による影響は4日、交通機関は日本航空と全日空が国内線と国際線でそれぞれ500便以上を欠航。東海道と山陽新幹線は午後2時ごろからすべて運休した。近畿の鉄道も一部地下鉄を除き、全線で運転を取りやめた。

 ライフラインも近畿・四国の約200戸以上で停電し、携帯電話も一時、通じにくい状態に。国公立の小中学校など約1万校が休校。百貨店も営業を取りやめ、企業も軒並み休業した。USJなどのレジャー施設も開園を取りやめた。

 文化財や観光地にも被害が出た。京都の世界遺産・仁和寺では仁王門の屋根瓦が落下し、金堂も破損。国宝の彦根城は天守閣や櫓(やぐら)の壁が一部はがれ落ちた。奈良の春日大社や京都の大覚寺などでも重要文化財が被害を受けた。京都の観光名所「嵐山」にある渡月橋は欄干が約100メートルにわたって倒れた。

空の玄関口「関西空港」閉鎖

 各方面の復旧作業にはかなりの時間を要する事態に陥ったが、甚大な被害を受けたのは関西空港だ。

 高潮で滑走路が水没して関係施設などを含め広範囲で浸水し、空港がある人工島を結ぶ連絡橋に強風で流されてきたタンカーが激突。連絡橋が断裂し対岸と通行不能になり、約8000人が一時、取り残された。空港は完全に機能を失い、閉鎖された。

 滑走路と駐機場は海水で約50センチ浸水し、第1ターミナルビル地下部分にも水が流れ込んだ。このため、滑走路と空港全体は相次いで閉鎖される事態に追い込まれた。商業施設では強風の影響でガラスが破損するなど、しばらくターミナルビルの一部は使用できなくなる見通しだ。

 ネックになっている連絡橋は4日午後1時半頃、被害に遭った。航空機用のジェット燃料を関空に運んだタンカーが乗組員11人を乗せたまま、台風に備えてエンジンを止めて停泊。予想以上の強風になすすべもなく連絡橋に激突し、さらに強風にあおられるように何度も船体がたたきつけられた。