それでは、なぜ世耕大臣は最初の段階で明らかに不正確かつ不可能なことを言ってしまったのでしょうか。まず北海道電力が“数時間で”と安請け合いするはずはありません。その一方で、おそらく世耕大臣は政治家ですから“ここで良い格好をしたい”という誘因はあったと思いますが、それでも大臣の判断だけでここまで踏み込んだ発言をできるはずありません。そう考えると、大臣が前のめりになるのを止めなかったのか、または大臣に振り付けたのかはともかくとして、大臣を支える立場である事務方の資エ庁の責任が非常に大きいのではないでしょうか。

 資エ庁のエネルギー行政は福島原発事故以降ずっと迷走している感が免れませんが、日本初のブラックアウトという大変な事態でも醜態を晒してしまったのです。非常時ほど正確な情報提供が求められることを考えると、世耕大臣にこのような発言をさせてしまった資エ庁の事務方は責任を問われるべきですし、やはり資エ庁は信頼できないと思われても仕方ないでしょう。

チャーチルの名言に学ぶ
エネルギー多様化の重要性

 2つ目は、チャーチルの名言の重みです。

 英国の元首相だったウィンストン・チャーチルは、第一次世界大戦前に海軍大臣だったとき、英国海軍の艦艇のエネルギー源を石炭から石油に転換し、艦艇の性能を上げました。

 そのとき、国産エネルギーである石炭から海外に依存する石油に転換して大丈夫かという議論が起こったのですが、チャーチルは「多様化が安全を確保する」と主張してそれを退けました。石油の輸入先を特定の国に依存せず、多様化すれば大丈夫ということです。

 エネルギー安全保障の観点から、エネルギー源の多様化や輸入先の多様化の必要性がいつも強調されますが、それはこのチャーチルの名言の延長に他ならないのです。しかし、北海道でのブラックアウトにより、多様化すべきはエネルギー源や輸入先に限定されないことがわかったと言えます。

 そもそも北海道でブラックアウトが起きてしまったのは、本州と北海道を結ぶ電力の連系線が細く、本州から十分な量の電力融通を受けられなかったこともありますが、それ以上に問題だったのは、苫東厚真という1つの発電所が北海道の電力需要の半分を賄っているという、発電量の一極集中ではないでしょうか。日本のように地震が多い国では、それ自体が電力の安定供給という観点からは大きなリスクであることが、今回わかったのです。