山形の木製ブロック玩具に海外から注文が殺到、開発企業の意外な素顔とはニューテックシンセイが販売する木製ブロック玩具「もくロック」(MOKULOCK)

加工精度は100分の1ミリ
海外で人気の木製ブロックとは

 長年続けてきた本業の先行きに危機感を覚え、新事業を模索するという中小企業は全国に多いだろう。しかし、パソコンやプリンタなどの電子機器および磁気テープドライブなどの組み立てを長らく続けてきたメーカーが、木製ブロックという知育玩具の製造販売に進出するというのは珍しい。

 山形県米沢市に本社を置くニューテックシンセイは、2011年に「もくロック」(MOKULOCK)という木製のブロックを発売、国内外でヒットし、現在、ヨーロッパ、北米、オーストラリアなど30ヵ国に輸出するまで拡大した。現在、年間50万ピースを製造販売しているが、その半分が海外向けだ。

 国内外の有名セレクトショップや雑貨店、百貨店、自社のウエブサイトなどで販売、無印良品向けには「日本の木のおもちゃシリーズ」としてOEM生産している。48ピース入った「ベーシックセット」が一番の売れ筋で、4000円強と決して安くはないが、「木のぬくもりを感じる」と人気だ。

 同社社長の桒原(くわばら)晃(38歳)は、「本当に木でできているのかと、海外のお客様から驚かれます」と笑う。

もくロック「もくロック」のパッケージ。販売するニューテックシンセイ自身も予想していなかったほど、海外で大人気だという

 ブロックは自在に積み重ねて遊ぶおもちゃなので、羽目合わせの加工精度が求められる。プラスチック製のブロックでは精密な成型が可能だが、湿度や温度で伸縮しやすい無垢材でブロックをつくることは難しいと誰もが思っていた。ニューテックシンセイは、本業で培ってきた製造・加工および品質管理技術を活かし、100分の1ミリ単位の精度で加工し、木製ブロックを生み出した。

 異分野出身だからこそ従来の“常識”に囚われず、成功したと言える。

「海外の購入者から『もくロックで孫と一緒に遊んでいる』というメールをもらうとうれしくて、開発した甲斐があったと思いますね」と桒原は語る。