しかしこの提携は、自動車各社にとっては諸刃の剣でもある。提携相手であるIT大手は、企業価値で考えれば自動車産業よりもずっと大きな資本力を備えている。飲み込まれる可能性が小さくはないのだ。

 可能性としては、自動車業界が今回の提携を転機に、「自動車IT業界」といった形で、現時点では想定できないような新しい資本提携へと一気に進むかもしれない。「アマゾン・フォード」や「サムスン・ヒュンダイ」といった企業連合が誕生するような、新たな時代に突入する可能性すらあるということだ。

参入障壁の崩壊で両刃の剣
コアは人工知能と全固体電池へ

 これまでの自動車産業には、異分野の企業が参入できない障壁が存在していた。それは、エンジンと変速機が開発できないメーカーには自動車はつくれないという、自動車産業のピラミッドを形づくる大原則だった。だからヤマハはオートバイはつくれても自動車市場に参入できないし、ブリヂストンは自転車はつくれてもやはり自動車メーカーにはなれないというのが、これまでの業界の常識だった。

 ところが2020年代には、ガソリン車の新規発売はEUや中国などの世界市場で禁止されてしまう。パリ協定に基づく新しい自動車の時代がやってくる、というロードマップが明確になってきた。これから10年後の自動車市場では、人工知能による自動運転機能を備えたEV(電気自動車)のコネクテッドカーが中心製品となる。

 そうなった場合にコア部品となるのは、従来のエンジンと変速機から、人工知能と全固体電池へと様変わりする。

 このうち全固体電池については、トヨタが日産、パナソニックらと連合を組んだり、東レ、旭化成といった日本を代表する化学メーカーが材料開発にしのぎを削ったりと、自動車メーカーを中心とした新秩序が組まれるのではないかという期待も、ある程度は醸成できている。