「痛い!」は身体のSOS。病気やケガに気づくきっかけになるが、痛む場所に原因があるとは限らない。思いも寄らない部位が痛いということも多々あるのだ。診断が遅れれば、それだけ治療は難しくなる。これだけは知っておきたい、重病が潜んでいる痛みについてまとめた。
九州在住の男性Aさん(50代)は、肩こりを感じて週に何度かマッサージ店に通っていた。しかし、一向に改善されない。整形外科を受診しようとした矢先、強い胸の痛みと息苦しさに襲われ、救急車で搬送された。医師の診断は、「急性心筋梗塞」だった。
「Aさんは幸い、適切な治療を受けたため、命に関わるようなことはありませんでしたが、そのとき医師から聞いて初めて“肩こりが心筋梗塞の症状”であることを知ったわけです」
こう話すのは、Aさんの治療を担当した小倉記念病院(北九州市小倉北区)循環器内科主任部長の安藤献児さんだ。
“痛み”は身体が発するSOS。だが、必ずしも病気になった臓器の周辺が痛むとは限らない。心臓の病気で肩に症状が出たAさんのように、思いも寄らない場所が痛むことがあるのだ。
「こうした痛みのことを、『関連痛』とか、『放散痛』と言います」
と説明するのは、総合診療医で、アメリカの家庭医療の専門医資格も持つ生坂政臣さん(千葉大学医学部附属病院総合診療科科長)だ。
一般的には関連痛は“病気になった臓器の周辺ではなく、別の場所だけに生じる痛み”、放散痛は“病気になった臓器の周辺と、別の場所の両方で生じる痛み”と区別される。