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『弁論術』
アリストテレス著(岩波書房/1992年)

 明治時代、日本はあらゆる西洋の学問を取り入れて文明開化を果たした。その中で唯一取り入れられなかったのが弁論術だ。「巧言令色鮮(すくな)し仁」の伝統が強い中、和魂洋才の和魂と相いれないと思われたからであろう。

 しかしながら、今日の多様化する世界の中で、米トランプ大統領のアメリカ・ファーストや、中国の国家資本主義の議論に対抗するために、西欧流の弁論術を知ることは不可欠になってきている。価値観の違う者同士の議論を実り多いものにするのが弁論術。著者のアリストテレス(紀元前384~紀元前322)は、アレキサンダー大王の教師だった人で、その筆の進め方は実務的だ。第一巻には難解な部分もあるので、第二巻から読まれることをお勧めしたい。

(国家公務員共済組合連合会理事長 松元 崇)