偏差値35の落ちこぼれが 奇跡の東大合格をはたした、『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』。本連載では同書の勉強嫌いでも続けられるゲーム式暗記術や、東大生の勉強にまつわるエピソードを紹介していきます。「英熟語ポーカー」「単語マジカルバナナ」「メモリーチェックゲーム」「暗記復讐帳ゲーム」など英語、資格試験……なんにでも使える24のゲーム式暗記術に注目です! 今回は著者の西岡壱誠氏による取材で明らかになった東大弁論部「最強の説得法」を紹介します!

東大弁論部・127年の歴史から学ぶ相手を説得する3つの極意

127年続く東大弁論部に学ぶ
「人を説得する方法」とは?

私の友達に、「東大で一番、人を説得するのが上手な人」がいます。
東大生多しと言えど、彼の話術には敵いません。彼は、名だたる名門大学の学生が参加する弁論大会で、東大生でも誰も知らないような社会問題を、たった11分の弁論で「それは重大な問題だ」と会場の全員を説得し、優勝したのです。

「そんなこと、別に問題じゃないだろ」と怪訝な目で見ていた人が全員、
「なるほど、それは大きな問題だ!!」と説得させられたのです。

日常的なレベルでも、彼の言葉には不思議な説得力があり、誰もが「確かにその通りだ!!」と納得させられてしまいます。

彼の名は吉沢健太郎。127年続く一高東大弁論部の、第127代目の部長です。
今回は彼から聞いた、127年の歴史の中で醸造された東大弁論部秘伝の『プレゼンから日常会話まで使える、相手を説得させる3つの極意』をお伝えしたいと思います。

プレゼンから日常会話まで使える、
相手を説得する「3つの極意」とは

まず1つ目の極意は「相手の立場に立つこと」。
相手がどのような知識を持ち、価値観を持っているのかを考えないと、説得などできないのです。

例えば、「ペットの命を救うことが大切だ」と説得したい時に、相手が「殺処分になる動物の数がどれくらいなのか」という知識を持っていなかったり、「動物の命が大切だと言うなら、家畜を殺すのはいけないのか」と価値観が違ったりした場合には、絶対に説得なんてできません。

大切なのは「どんな知識量の人でも、どんな価値観の人にも共有できる話」。
「殺処分になる動物の数はこんなに多いんです。ここにかかるお金も膨大です。家畜のように食用でなく、ただ無為に殺されていく命を見過ごすことはできませんよね」なんて具合に、説得はどんな人にでも理解可能で価値観が共有できるように行う必要があるのです。

2つ目の極意は「メリハリをつけること」。

例えば「保育園の数を増やすべきだ」と主張したい時に、「保育園が増えれば待機児童の数が減るから作るべきだ」と説明したとしても、「待機児童の数が多いことでどんな問題が発生しているのか」とか「待機児童の数は保育園の数が増えることで本当に減るのか」とか、そう疑問が生じて、十分な説得はできません。

「現状、こんな問題が存在する」という現状説明と、
「でも、Aがあればこの問題が解決する!!」という内容説明と、
「Aというのは、こんなに重要で、優先順位が高いんだ」という重要性の説明
の、3つが揃っていなければ、相手を説得することはできません。

たとえば逆に、
「今、待機児童が多くてこういう問題が起こっている」と現状説明をし、
「でも、保育園の数が増えればこれらの問題は解決する‼」と内容説明をし、
「待機児童の数が年々上昇傾向にある‼このままいくともっと大きな問題が発生する‼」と重要性の説明をすれば、自ずと「なるほど、それなら保育園の数を増やすべきだ」と聞き手も思いはじめます。

この3つがきちんと説明できているかどうかを考え、話している時には自分が3つのうちどれを説明しているのかをしっかり意識することが必要なのです。

3つ目の極意は「質問させること」

ここまで話を聞いた時に自分は、「そうは言っても限られた時間の中で、誰からも疑問を持たれないようにこの3つを全て入れるなんて、難しいんじゃないかな?」と聞きました。すると、「全部説明しようとする必要はない」と、彼は言うのです。

「えっ、でも全部説明しなかったら、説得できないんじゃないの?」と私が疑問をぶつけると、彼はこう言い放ちました。
「今君が疑問を持ったように、話の中に『欠けているところ』をあえて作って、そこを質問させればいい」と。

そう、3つ目の極意はこれ。「わざとすべてを話さないことで相手に疑問を持たせる」、いわば「質問させる」こと。私もまんまと彼の話術の術中に嵌ってしまったわけです。

例えば「具体的に保育園の数はどれくらい増やすべきなんだろう?」と疑問を持たれるかもしれませんね?でも、聞く人がそうやって疑問を持ってくれれば、聞く人は「この疑問に対する答えをどこかで述べるかもしれない」と思って、話を良く聞いてくれるようになります。

もちろん先程のメリハリがしっかりしていなければスピーチ全体に疑問を持たれてしまいますが、それとは違ってメリハリをしっかりさせつつ「内容」に疑問を持ってもらえれば、そのスピーチ全体の聞き手の興味を増大させることができるのです。
さらに、わざと疑問を抱かせる『的』を作っておき、後から質問された時に詳しく「それはこういうことです」ときちんと説明できれば説得力が向上します。

そして、逆に聞く人が疑問を抱かない事柄は、聞く人が「そこまで知る必要がない」と思う事柄だということ。話す必要がない部分を削ぎ落とすことにも繋がるのです。
私たちは「説得術」というと、「いかに上手く話すか」というところに主眼を起きがちです。
しかし彼らは、「いかに上手く話さないか」、つまり「いかに上手く疑問を抱かせられるか」が重要なのだと考えていたわけです。

こんな風に、「相手の立場に立って話を組み立てて、メリハリを作り上げて話をして、さらにわざと質問をさせる」これができれば、どんな人でも必ず説得することができる。
これこそが、127年の極意だったのです。

さて、東大弁論部の3つの極意、いかがだったでしょうか。
東大弁論部に興味を持った方は、今度の五月祭(東京大学の本郷・弥生キャンパスで行われる学園祭)で弁論大会がみれますので、是非足を運んで見てください!