幸い、鉄剤はよく効いた。

 飲み始めてしばらくすると、寝付きがよくなり、朝までぐっすり寝られるようになった。疲れも取れるようになり、集中力も回復。やる気も自然と湧いてくるようになり、気持ちにも余裕が出てきた。

「人間の弱さを実感しました。鉄が足りない、ただそれだけで、身体が動けなくなるのみならず、精神的にもガクーンと落ち込んでしまうんですね。

 具合が悪かった頃の、まさに『うつ病』そのものだった自分を振り返ると、ごめんなさいと謝りたくなります。すごく我慢していたんだなぁって。かわいそうでした(笑)。

 もっと早く、病院に行って、治療してもらえばよかったです。だって、こんなに簡単に楽になるんですから。

 もちろん、育児と仕事の両立は大変で、疲れは普通に感じていますが、得体(えたい)の知れない不安に押しつぶされそうだった頃とは比べ物になりません」

 貧血にはいろいろな種類があるが、鉄欠乏性貧血はその9割以上を占め、特に若い女性の間では、4人に1人が該当するという。血中フェリチン濃度の検査が一般的に行われるようになればもっと増えるかもしれない。

「貧血って、女性にとってかなりポピュラーな病気だけど、治療している人って少ないんじゃないかしら。心も体もSOSサインを出しまくっていても、『大したことない』って思い込んでしまうのよね」

 梨香さんは今後、周囲にだるそうにしている女性がいたら、自分の体験談を披露し、婦人科の受診を積極的に勧めるつもりだ。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)