「You guys rock!(あんたらスゲーぜ)」「Your service was incredible(信じられないくらい素晴らしいサービスだった)」――。
靴や衣類、ハンドバック、アクセサリーなどを扱うオンライン通販会社、ザッポス(Zappos.com)のサイトは、顧客からの感謝と賛辞に溢れている。日本人にはあまり馴染みのない企業だろうが、本国のアメリカでは創業10年足らずにしてすでに伝説となりつつある存在である。
自らを「靴を売ることになった顧客サービス企業」(A Customer Service Company That Happens to Sell Shoes)と呼び、語り草は数知れないほどの卓越した顧客サービスが特徴だ。ザッポスは、2007年の米小売業協会(National Retail Federation survey)の調査で顧客サービスにおいて、かつて伝説をつくったノードストロームやオンライン販売トップのアマゾンを抑えて2位に選ばれている。
ザッポスは1999年にサンフランシスコで靴のオンライン販売を始め、売上高は2000年に1.6億円、それから年を追うごとに9、32、70、184、370、597、そして2007年は840億円を記録し、2008年は1000億円超を見込んでいる急成長企業だ。(簡素化のため1ドル=100円で換算)
オンライン販売のリーダー的存在アマゾン.comの2007年売上高が、北米で8095億円、うち当初からの本業の本・CDなどのメディアが4630億円。ザッポスは、実にアマゾンと比較されるところにまで来ているのだ。ちなみに、日本のオンライン販売ではアマゾン.co.jpが1500億円で首位、2位は650億円のベルメゾンネットである(出所:ビジネスチャンス2008年5月号「日本のECサイトBEST1000」)。
また、日本で靴小売首位のチヨダは2008年2月期連結売上高1791億円であり、ザッポスより多少大きいがマイナス成長である。
母を亡くした顧客に届いた花とカード
インターネットを介して伝播する感動
では、ザッポスは卓越した顧客サービスを実現するために、具体的には何をしているのか。お題目としては、主に以下の3つがあげられる。
1)24時間年中無休のコールセンター
2)送料・返送料は無料。365日以内の返品はOK
3)迅速で間違いのない配送
これらだけでも平均的なオンライン小売よりも顧客に献身的だが、特筆すべきはフレンドリーで心のこもった「顧客に“WOW”(感動)をもたらす」サービスだ。