「人間は論理的じゃない。コミュニケーションは情緒的なものであり、顧客が好きと思うか、嫌いかが問題だ」と、本田技研工業宣伝販促部ホームページ企画ブロック・リーダー渡辺春樹氏は語る。

 顧客が参加し、コンテンツまでつくってしまうホンダの自社ウェブサイト――。おびただしい数の顧客からのメールに必死に対応し、それを柱として据える顧客コミュニケーション戦略――。

 エモーション × コミュニケーション を軸に企業モデルを考える本連載は、主に米国企業の事例を紹介してきたが、NTTデータに続き今回は日本を代表する大企業ホンダを取り上げる。対外的なウェブ・コミュニケーションの先進例としてのエッセンスが示されている。

「八ヶ岳Honda菜園」に見る
血の通ったウェブサイト

 1996年のオープンから12年になるホンダのウェブだが、Web2.0という言葉がない立ち上げ当初から、それを実践してきた。渡辺氏いわく、「そもそも双方向だからWeb2.0しかない。一方通行のウェブなんて意味がない」。

 顧客が教えてくれる、顧客とつくっている、というホンダのウェブは、何か違和感があると必ず顧客が連絡してくるという循環ができている。だから、ユーザーの意見をすぐに反映して、よりよいウェブサイトへと進化を続けてきたのである。

 ホンダは、CGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)といった言葉が生まれる前から、コミュニティを開設してきた。今では、4輪自慢「ユーザーズボイス」、2輪自慢「ライダーズボイス」、「クルマ家族会議」などのコミュニティで一般からの投稿を載せている。

 例えば投稿された写真はチェックしてナンバープレートが見えないように修正するなど、顧客のリスク対策を施してから掲載している。信頼される企業を目指すためだが、これは自己責任型の多くのCGMサイトとは基本的に異なる点だ。