安倍首相と石破氏が山本KID徳郁選手の「生き様」に学ぶべきこと自民党総裁選の直前、日本の総合格闘技界最大のスターであった山本KID徳郁選手が逝去した。これは単なる偶然だろうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

自民党総裁選の直前に逝去
山本KID徳郁選手の凄さとは

 自民党総裁選の直前の9月18日に、日本の総合格闘技界最大のスターであった山本KID徳郁選手(以下、山本KID)が、胃ガンで逝去しました。まったく偶然のタイミングとはいえ、山本KIDの戦う姿勢と総裁選での両候補の姿勢を比較すると、総裁選が盛り上がらなかった理由、さらには今の政治に足りないものが見えてくるような気がします。

 この連載を読んでくださっている読者の多くは、山本KIDの名前は知っていても、彼がどういう選手であったかを知る人は少ないと思います。そこで、まず山本KIDの凄さを簡単に説明しておきますと、彼の最大の魅力はそのファイトスタイルにありました。

 K-1(殴る・蹴るの立ち技のみ)と総合格闘技(殴る・蹴る・関節を極める)の双方のリングを股にかけ、どんな難敵が相手でも真正面から立ち向かって、殴り倒そうとしていたのです。

 かつ山本KIDが凄かったのは、格闘技の試合では体重差があると重い選手の方が有利になるため、体重別で厳密に階級が分けられている中で、60キロそこそこの軽量級であったにもかかわらず、「体重差なんて関係ない」と豪語し、2階級も上の70キロ級の選手とも試合をしており、そこでも真正面から立ち向かっていたのです。

 だからこそ、多くの人が山本KIDの試合に熱狂しました。実際、かつてはK-1でも総合格闘技でもヘビー級の大きな選手同士の試合、つまり見るからに迫力があってわかりやすい試合が人気だったのですが、山本KIDの登場により、軽量級の試合もエキサイティングで面白いということが認知され、軽量級の選手でも実力さえあれば十分に稼げるようになったほどです。

 つまり、日本の格闘技界の最大の功労者である山本KIDの魅力は、見た目の格好良さもさることながら、困難に対して真正面から立ち向かっていくその姿勢だったのです。それが高く評価され、格闘技ファンのみならず一般の多くの人にも認知されたからこそ、その逝去がスポーツ紙だけでなく一般メディアでも、大きく報道されたのだと思います。