「(子どもたちにとっての)カフェの魅力は食べ物よりボランティアの人たちです。毎回同じ人に会えるわけではないのですが、だからこそ再会の喜びも経験できる。ほぼ毎日会う友達や先生とは別な関係ができていて、尊いと思える存在と出会い、また尊いと思ってもらえる関係ができた生徒は幸せそうです」(松田さん)

小さなことでも
「希望が叶った経験」を

 長年学校司書をしてきた松田さんがずっと気になっていたのは、思いを吐き出せる先が少ない子が多いことだった。

「本当に言いたいことがいえない子や、話せること自体がないと思い込んでいる生徒もたくさんいます。カフェのボランティアたちは、生徒たちと何気ない会話をする中で、実は生徒たちの思いを引き出していることもあります。端から見ていると、そんな関係性の中に癒しのパワーがあるなと。でもあくまでもボランティアなので、何の義務もなくて。それが生徒とボランティアお互いにとって楽で心地よい関係を作っているようです」(松田さん)

 松田さんは、貧困や家庭内で問題を抱える生徒たちに気を配る。

「今まで自分の希望が叶わなかった経験が多い子どもたちにとっては、希望が叶う場があってもいいと思っています。司書としてはささやかなことしかできないけど、例えば、『図書館に貼ってあるアイドルのポスターが欲しい』と言えば、『いいよ、あげる!』とか、そんな小さなことでも、思い切って聞いてみたら叶ったという経験をするのも大切ではないかと」(同)

ヤンキーもオタクもいる
ジャングル化した図書館の中で

 ぴっかりカフェが始まって3年が経つ中で、松田さんは振り返る。

「カフェを始めた3年前は、先生たちも図書館にあふれていました。先生方が普段とは違う環境で生徒と出会い直す場所にしてほしいというのもカフェの目的だったのですが、最近では覗きにきても、生徒とゆっくり話す余裕のある先生が減ってしまいました。公立の学校なので、10年経てば先生が全部変わる。意識や体制もどんどん変わっていきますからね。だからこそ相談員の石井さんのように、ミッションを持ち続ける人と、学校外からのボランティアの人たちが続けて来てくれることが重要です」