リクルートが発行する持ち帰り自由のクーポン・マガジン『ホットペッパー』は、事業スタートから7年にして全国50版、売上高500億円というビッグ・ビジネスに成長を遂げました。
その背景には、いくつもの独自なマネジメント手法がありますが、人の育て方も独特です。事業を支えたのは3年を上限とする契約社員でした。
いかなる仕掛けでモチベーションを高め、「必ず勝つ風土」を作り上げたのか。
事業を立ち上げた平尾勇司・元リクルート執行役員(現・Doable代表取締役)に聞きました。
3年で成長させるのが
マネジメントの役割だった
「ホットペッパーは正社員だけでやっていたら、成功しなかったでしょうね」
平尾さんは、振り返って断言します。
「リクルートではCV職と呼びますが、3年の契約社員。彼ら、彼女らが、ホットペッパーの成功を支えたんです」
CV職に許された時間はたった3年。3年の時間の中で成長、成功、成果…自分が納得し、誇れるなにかを手に入れたい。それだけに、仕事に対する集中力が違います。この3年契約という制約が、逆に結果に執着するモチベーションの源泉になったという構造になりました。
各エリアの責任者である版元長という職務をも、CV職が務めるチャンスを獲得していきました。
「正規雇用の組織というのは、自分が偉くなるための連鎖の組織です」と平尾さんは指摘します。
「“こいつについて行ったら、オレも偉くなれるかもしれない”と考えて、ボスの言うことを聞いて仕事をするわけです。言ってみれば、それは自分の損得の連鎖です。でも、ホットペッパーは、そういう連鎖は起こらない。なぜなら3年で卒業していく組織だから。しかも、今の若い世代は、“別に偉くなんてなりたくない”という人が多いでしょ。それより面白いこと、やりたいことをやりたい、という。ホットペッパーは、損得ではなく正しいこと、楽しいこと、面白いことでつながった集団だったんです」
ホットペッパーを立ち上げ、基本的なビジネスモデルを構築した平尾勇司・元リクルート執行役員 |
入社3年以内に3割強が辞めてしまう時代。それにはさまざまな要因や背景があると思いますが、働くことをめぐる基本的な価値観が変容したことは間違いない事実でしょう。