前回は公募制ブラザーシスター制度に自ら手を挙げたアサヒビールの若手社員の話を聞きました。
では、制度設計を担当する人事サイドは、現状をどのように評価しているのか。また、そもそも、なぜ公募制に切り替えたのか。
詳しく聞いてみることにしましょう。

ブラザーを務めることは
かつては「一人前の証」だった

アサヒビール本社

 「ブラザーシスター制度に手を挙げた理由を聞くと、大きくは2つあるようです」と、人事部副課長の西郷直樹さんは説明します。

 「自分の勉強になるから、というのがひとつ。そして、自分がやってもらったことを返していきたい、というのがふたつ目。ブラザーシスターには入社3年目から、40代の管理職までいるのですが、なかには、自分が思うようには若手が育っていないから、という理由で志願するベテランもいます」

 ある一定の年代になると、自分が培った経験やスキルを次の世代に伝えたいと思うようになる、ということは、多くの方が共感するところでしょう。

 アサヒビールがやや特異なのは、そういう思いを、入社数年の若手社員までもが共有している点にあります。

 人事サイドでも、本当のところ、なぜ、これほど積極的に手が上がるのか、その理由についてはしかとはつかみかねているようです。

 「企業風土というしかないのかもしれません。公募制にする前は、指名制でブラザーシスターをお願いしていたのですが、その当時は、“ブラザーシスターに選ばれた”ということが一種の名誉であり、それに選ばれてこそ一人前と認められた証、ととらえられていたようです。その名残が、いまでもあるのかもしれません」