今回から若手社員の育成に特色のある企業の「かまい方」をレポートします。
第1回は、4年前にブラザー・シスター制度を公募型に切り換えたアサヒビールです。人事サイドにとっても、それはリスキーな試みだったといいます。それでなくても多忙を極めるビール営業の現場で、果たして部下指導という「プラスα」の業務に好き好んで手を挙げる社員がいるのかどうか。しかし、杞憂でした。ふたを開けてみると、定員をはるかに上回る希望者が名乗りを上げたそうです。
それはなぜでしょう?公募制ブラザー・シスターは、4年目の今年も定員63名に対して92名が手を挙げたそうです。そのなかの1人、入社3年目でブラザーを経験した東京統括支社新宿支店の駒田康二さんに話を聞いてみました。
1週間で「遠慮はやめよう」と
軌道修正
入社3年目にしてブラザーを務めた駒田さん。ゴールデンウィーク明けにブラザーとなり、9月一杯の任期を終えたところです。
まず、その感想を聞いてみました。
――営業という多忙な業務を持ちながらの新人指導は、大変じゃありませんでしたか?
「いえ、楽しみながらできたと思います。あまり負担だとは思いませんでした」
――3年目ということで、仕事にも慣れて、余裕があったからでしょうか?
「仕事では、いまでも周囲の先輩たちにいろいろと助けてもらっています。もともとブラザーをやってみたい気持ちはあったのですが、去年は自分のことで精いっぱいで、とてもそんな余裕はありませんでした。3年目に入って、そろそろできそうだな、と考えて手を挙げたわけです」
入社3年目で自ら志願してブラザーを務めた駒田康二さん |
ブラザーになったのはゴールデンウィーク明け。担当する新人と初めて対面したときは、「こいつ、大丈夫かな?」と思ったそうです。
「私はアメリカンフットボールをやっているのですが、彼は体育会系ではないし、なんだか色白な感じ。その上、やりにくかったのは、年が一緒だったことです。それではじめのうちは、ちょっと遠慮がちな対応になりました。でも、一週間で「遠慮はやめよう」と軌道修正しました。そんな対応では、相手のためにならないと思ったからです。ダメなものはダメと言って、でもいいところは誉めるアメとムチで行こうと、考えました」