もし、あの時、筆者が「態度が悪いのはあなたですよ!」と店長に反論したらどうだっただろうか。筆者の勇気ある態度に、店員や他の客たちはスッキリ胸がすく思いをしたかもしれない。よくぞ言ってくれた!偉いぞ、と。お店にとっても、それはいいことである。どんなに味に自信があっても、あれでは客が寄り付かなくなるだろう。

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 しかし、考えてもみてほしい。筆者はコンサルではない。客である。お金を払って、なぜ、店の業務改善のようなことをしなければならないのか。荒々しい態度の店長に反論するには、ただでさえ勇気が必要なのだ。むしろ、お金を払ってほしいくらいである。

 それにしても解せないのは、店長がどういうつもりなのか、ということである。「使えない店員をしっかり叱りつけて、立派な店長だ。その心意気を買って、またこの店に来よう」と思う客がいるとでも思っているのだろうか。筆者には、ただ単にイライラを抑えきれず、ところかまわず発散しているようにしか見えない。店長は、筆者に対する店員の態度に腹を立てたつもりでいるかもしれないが、店長のその態度こそ腹立たしい。

 店員を叱ったのは、客のためでも店員の教育のためでもなく、自分がスッキリしたいためである。それが透けてみえるからこそ、「お客の前で店員に説教する飲食店」は嫌われるのだ。ブラック店舗は、店員だけではなく、客に対してもブラックなのである。

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(フリーライター 宮崎智之)