ドラマは理想主義的過ぎた?
「現実はこんなものではない」

 もちろん、フィクションだから現実が描けないわけではない。

「フィクションでは、理想を描くことも現実を描くこともできます。今回、ドラマ『ケンカツ』に登場したケースワーカーたちは、様々な失敗はしていましたが、理想の比重がより大きかったと感じられます」(柏木さん)

 そもそも、ドラマの舞台である東区役所・生活課には、おおむね半数の女性ケースワーカーがいる。まず、「女性ケースワーカーがいる」ということ自体に、「現実じゃない」という声がある。ケースワーカーが全員男性という地域は、珍しくない。そういう地域では、女性の生活保護当事者が、婦人科疾患について男性ケースワーカーに相談することになる。「保護なめんな」ジャンパーで批判を浴びた時の小田原市もそうだった。

 さらに、主人公である新人ケースワーカー・義経えみる(出演:吉岡里帆)は、寄り添って対人援助する姿勢を最初から最後まで貫こうとする。受給者たちからは「そんなケースワーカー、どこにいるんですか?」という声も多かった。もちろん実在するのだが、「どこにでも」「いつでも」というわけではない。ケースワーカーからも同様の声がある。

「現場のケースワーカーからは『こんなに暇じゃない』『こんなに簡単にはいかない』、また生活保護利用者からは『こんな、親身になってくれるケースワーカーには会ったことがない』といったリアリティに関するツッコミが、数多く見受けられました」(柏木さん)

 どちらかと言えば「理想寄り」の姿勢が特に目立ったのは、高校生が「収入申告」という手続きを知らなかったゆえに、アルバイト代60万円をほぼ全額、収入認定(召し上げ)されてしまったエピソードだろう(ドラマ第2回・第3回)。

 高校生に悪意はなく、手続きを知らなかっただけだった。しかし高校生は「収入申告の説明を受けた」という確認書の内容を理解せずに署名・捺印していたため、規定通り不正受給として取り扱われることになった(この規定は現在、若干変更されている)。