化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングス(HD)の元ナンバー2が昨年末に「鈴木郷史社長が約20年前に重要書類を捏造していた」と内部告発。鈴木社長は全否定しているが、それを機に、経営基盤に関わる巨額の遺産相続裁判が始まり、HDが揺れている。事業承継コンサルタントである、HD元リスク管理業務委託先代表(昨年末解約)は一部捏造に関与したと主張。この男性のインタビューをお届けする。『週刊ダイヤモンド』10月13日号の第2特集は、「~小説より奇なり~告発で始まったポーラ遺産騒動の深層」。告発の経緯、裁判の進捗状況、会社への影響などを詳細にレポートする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)
――元ナンバー2(今年3月で取締役退任)の告発によれば、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の鈴木郷史社長はおじの常司会長が2000年11月に急死した以降、(1)常司会長所有のポーラグループ有力会社株の自身への譲渡契約書を常司会長の生前を装ってバックデートで捏造、(2)常司会長の美術品コレクションをポーラ美術振興財団(理事長=鈴木社長)へ寄付する確約書(以下、美術品寄付確約書)を同様に捏造――、の疑惑が浮上しています。要は捏造書類をもって遺産を不正に入手、あるいは不正に流した疑惑です。
私は(2)に関与し、(1)もポーラ化粧品本舗(現ポーラ)の専務(故人)から事後報告を受けて知っていました。(1)では鈴木社長の指示の下、会社に関わりがあった公認会計士や税理士までも捏造に協力していました。会社のため、財団のためと思って今まで秘していましたが、詐欺ほう助罪など想定される刑事罰の時効が過ぎ、またこのような状況になった今、真実をお話しようと思います。
――(2)の関与を具体的に教えて下さい。
常司会長が亡くなってから約4ヵ月後の2001年3月1日、ポーラ五反田ビルでポーラ化粧品本舗の専務、今回の告発者(当時秘書室長)の2人に会い、「鈴木社長からのお願いです」と捏造の美術品寄付確約書を渡されました。「1996年のポーラ美術振興財団設立より前に、財団設立準備事務局で預かっていたことにしてほしい」と。私はポーラ美術振興財団の設立準備事務局長でしたから。専務らからは故・常司会長の実印を鈴木社長が使える状況であることの説明も受けました。