ポーラ美術館(神奈川・箱根)を運営する公益財団法人ポーラ美術振興財団で6月、一見不可解な人事があったことが本誌編集部の取材で分かった。旧文部省(現文部科学省)の元幹部など複数の評議員が再任されなかったのだ。
財団理事長は化粧品大手、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の鈴木郷史社長。鈴木社長は2017年末、HD取締役(当時、今年3月退任)にHD外部関係者を通じて、叔父の常司氏(2代目社長、2000年死亡)からの資産継承をめぐる不正疑惑を告発された。これらを基に、常司氏の妻から本来の遺産対象を確認する2件の裁判を起こされている。告発の内容が正しければ、18年前に法定相続人の間で分けるべきだった遺産が、鈴木社長や財団へ不正に渡ったことになるからだ。
告発者ら2人は告発当時、財団理事を兼ねていた。だが、18年1月の評議員会で「(告発に関連し)不当な要求をした」などとしてそれぞれの解任案(2案)が出され、賛成多数で可決された。2人は「ぬれぎぬに基づいての解任」などと主張して、東京地方裁判所で地位確認を求めて係争中だ。
関係者によると、評議員11人のうち3人(元文化庁長官など旧文部省系2人と国立女子大学名誉教授)は1月の評議員会で、「運営の公正と透明性の確保が強く求められる公益財団なので慎重に審議すべき」などとして、告発者らの理事職解任案(2案)に反対した。そしてこの評議員3人がそろって6月の任期満了で再任されなかった。そのため、「鈴木理事長らによる報復人事」「係争中の裁判の場外戦」との見方が一部で出ている。