日焼け、丸刈り、無精ヒゲ

 当初、目や口元など特徴的な顔立ちのため、逮捕は時間の問題とみられていた。しかし、こそこそとした隠密行動ではなく、堂々と素顔をさらして自転車旅行を満喫。その間に公開されていた色白の顔は日焼けして無精ヒゲを伸ばし、ぼさぼさだった髪の毛は丸刈りにしていた。

 公開されていた等身大パネルの猫背でさえない表情、ジャージ姿と違い、テレビで繰り返しオンエアされる動画は明るい笑顔で、お洒落なサイクルジャージを着用した雰囲気は全く別人のようだった。

 結果的に49日間で会話した相手は誰一人として、樋田容疑者と気付かなかった。逮捕時でさえ身分証明書などを所持していなかったため、指紋や入れ墨などの照会で本人と確認されたぐらいだった。

 まず、一般の方々には「なぜ高知県警の警察官は自転車の防犯登録の照会をしなかったのか」が疑問だろう。テレビや新聞の報道では「怠慢」との指摘もあるが、実は他の都道府県で防犯登録された自転車の照会は、当該の都道府県警察本部に要請する必要がある。つまり「手間が掛かる」のだ。犯罪行為が明らかであれば話は別だが、緊急性がなければ「お疲れさま。気を付けてね」でバイバイが普通だ。

 ましてや夏休み期間中で、見た目は完全なサイクリング旅行者。しかも、愛媛県庁発行のプレートまで所持している。これで「疑え」と言うのはなかなか酷な話なのだ。

 もっと顔をよく確認して気付いていれば県警本部長賞で、次の昇進試験では確実に合格し階級がアップしていただろうから、一番悔しいのはこの警察官2人に違いない。それが内外で「間抜け」呼ばわりされて、少し気の毒ともいえる。

 ほかにも愛媛県庁職員らもスルーしていたが、もともと四国はお遍路さんを歓待する文化がある。よそ者である旅行者に警戒感が薄い土地柄なのだ。笑顔で明るくアプローチしてくる樋田容疑者に親切に対応していたのは、何ら不思議ではないのだ。