迅速な判断で成立した連合だが
未来像はまだおぼろげ

 準備期間6ヵ月という、日本企業としてはかなり迅速な判断で成立したトヨタ・ソフトバンク連合。だが、未来像はまだおぼろげだ。

 トヨタが2020年代のモビリティーサービスプラットフォームのコアデバイスにしようとしているのは、年初のCESで公開した新モビリティーコンセプト「eパレット」。箱型の無人EVで、旅客用にも貨物用にも架装できるというもので、人工知能技術が発達すれば、リアルタイムでの交通需要予測やアプリを通じた乗車オーダーによって最も効率の良いルートを選定して走れるといった高度なオペレーションの実用化も期待できる。

 このeパレットによるサービスについては、トヨタとソフトバンクは共通のビジョンを容易に持てるだろう。eパレットは公共交通機関の代替で、バスやタクシーより便利かつ適正な利用料金水準であれば、客はついてくるだろう。

 だが、公共交通機関というものはコスト制約がきわめて厳しい。今のところはソフトバンクがIT配車サービスの世界大手に手当たり次第に出資し、高いシェアを持っているように見えるが、儲かるとなれば必ず競合相手というものが出てくるし、「自動運転車は半導体の塊。台あたりの価格は普通のクルマと1桁違う」(孫会長兼社長)という自動運転車の耐久性も無限ではない。公共交通機関に替わるプラットフォームで寡占状態に持ち込めば「ぬれ手に粟」の商売になるという保証はどこにもない。

 シェアリングプラットフォームで高い付加価値を手にする方法は結局、利便性を超えた喜びを独自性の高い方法で提供することだけだ。それを実現させるのはeパレットではなく、その先のパーソナルモビリティーの役目だ。

 豊田章男社長は事あるごとに「愛車」という言い方を挙げて、「クルマには愛が付きます」と力説しているが、現在のマイカー保有というクルマの運用からシェアリングに移行したときに、愛されるクルマならぬ愛されるサービスを作れるかどうかは未知数だ。